健康診断で「HbA1cが高い」と言われたら?数値の見方と放置するリスクについて
健康診断で「HbA1cが高い」と指摘されたものの、特に自覚症状がないため「まだ大丈夫だろう」と後回しにしていませんか?その判断が、実はあなたの将来の健康を大きく左右する重要な分かれ道かもしれません。
HbA1cの数値は、自覚症状がない水面下で進行する「サイレントキラー」からの警告です。放置すれば失明や人工透析、さらには心筋梗塞や脳梗塞のリスクが着実に高まります。事実、肥満ではない方でも約4割近くが糖尿病またはその予備群であるという衝撃的なデータもあるのです。
この記事では、なぜ症状がないのに危険なのか、そして手遅れになる前に明日から何をすべきかを専門医の視点で徹底解説します。あなたの未来を守るための第一歩を、ここから踏み出しましょう。
HbA1cの数値が示すあなたの健康状態と深刻度
健康診断の結果表で「HbA1cが高い」との記載があり、ご自身の体のことが急に心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に自覚症状がないと、「なぜ?」「これからどうすればいいの?」と不安に思われるのも無理はありません。しかし、このHbA1cという数値は、あなたの体が発している将来の健康に関わる大切なサインです。
このサインを正しく理解し、適切に対処することが、未来の健康を守るための第一歩となります。ここでは、糖尿病専門医の視点から、HbA1cの数値が具体的にどのような状態を示しているのかを分かりやすく解説します。

HbA1cとは?健康診断で測定する本当の意味
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは、血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」というタンパク質が、血液中のブドウ糖と結合したものの割合を示す数値です。
血液中のブドウ糖が多い状態、つまり高血糖の状態が長く続くほど、ブドウ糖と結合するヘモグロビンの量も多くなります。これによりHbA1cの数値は高くなります。
赤血球の寿命は約120日(約4ヶ月)です。そのため、HbA1cを測定することで、検査した日からさかのぼって、過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均的な状態を把握することができます。
健康診断で測定する空腹時血糖値は、食事や運動によって変動しやすく、いわば「点」の評価です。一方でHbA1cは日々の変動に左右されにくい「線」の評価であり、より長期間にわたる血糖コントロールの状態を正確に映し出す重要な指標なのです。
正常値・境界型・糖尿病を分ける具体的な数値の見方
HbA1cの数値は、ご自身の体が今どの段階にあるのかを知るための重要なものさしです。日本糖尿病学会が示す基準では、以下のように分類されています。ご自身の数値と照らし合わせ、現在の状態を確認してみましょう。
| HbA1c(NGSP値) | 判定 | 状態の解説 |
|---|---|---|
| 6.0%未満 | 正常型 | 血糖値は正常範囲内です。現在の良好な生活習慣を継続することが望まれます。ただし、人間ドック学会では5.5%以下を基準値としており、5%台後半の方は注意が必要です。 |
| 6.0%~6.4% | 境界型(糖尿病予備群) | 糖尿病を発症するリスクが高い状態です。いわば「イエローカード」が出ている状態であり、この段階で生活習慣を見直すことで、糖尿病への進行を防げる可能性が高まります。 |
| 6.5%以上 | 糖尿病型 | 糖尿病が強く疑われます。合併症を防ぐためにも、速やかに医療機関を受診し、専門医による診断と治療計画を立てることが必要です。 |
※この基準は診断の一つの目安です。実際の診断は、HbA1cだけでなく、血糖値や症状などを総合的にみて医師が判断します。
「境界型」は、まだ糖尿病ではありませんが、決して安心できる状態ではありません。この大切なサインを見逃さず、生活習慣の改善に取り組む絶好の機会と捉えることが重要です。
なぜ自覚症状がないのに「要精密検査」になるのか
「特に体調は悪くないのに、なぜ精密検査が必要なの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。実は、高血糖は初期の段階ではほとんど自覚症状が現れません。
のどが異常に渇く、トイレの回数が増える、体重が急に減るといった典型的な症状が出る頃には、病状がかなり進行してしまっているケースが少なくないのです。
高血糖は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれます。症状がないうちから、じわじわと全身の血管を傷つけ、動脈硬化(血管が硬く、もろくなること)を進行させていきます。
最近では、肥満ではない方でも注意が必要であることが分かってきました。複数の研究を統合した信頼性の高い分析によると、肥満ではない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)※の方のうち、糖尿病の方は約15.6%、その前段階である前糖尿病の方は約22.9%にも上ることが報告されています。
※非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD):飲酒習慣がない、または少量であるにもかかわらず、肝臓に脂肪が蓄積する病気。
このように、自覚症状や肥満がなくても高血糖のリスクは潜んでいます。健康診断で「要精密検査」と判定されるのは、症状が出る前の段階で体の異常を捉え、深刻な事態に至るのを防ぐための重要な機会なのです。
HbA1cと空腹時血糖値の違いと両方を確認する重要性
健康診断では、HbA1cとあわせて「空腹時血糖値」も測定されることが一般的です。この2つの数値はそれぞれ異なる角度から血糖の状態を評価しており、両方を確認することで、より正確に体の状態を把握できます。
| 項目 | HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー) | 空腹時血糖値 |
|---|---|---|
| 評価する期間 | 過去1〜2ヶ月の平均的な血糖状態(長期的な指標) | 採血したその瞬間の血糖値(短期的な指標) |
| 食事の影響 | 受けにくい | 直前の食事の影響を大きく受ける |
| わかること | 生活習慣を反映した血糖コントロールの傾向 | 検査時点での短期的な血糖値の変動 |
この2つの指標を組み合わせて見ることの重要性は、例えば以下のようなケースでよく分かります。
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ケース1:空腹時血糖値は正常だが、HbA1cが高い 食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖(かくれ糖尿病)」の可能性があります。空腹時は正常でも、食後の血糖値スパイクが血管にダメージを与えているかもしれません。
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ケース2:HbA1cは正常範囲だが、空腹時血糖値が高い 高血糖状態になり始めている初期段階の可能性があります。インスリンを分泌する膵臓の機能が少しずつ低下し始めているサインかもしれません。
このように、どちらか一方の数値だけでは見逃してしまう体の変化を、両方の指標をあわせて評価することで、より早期に、そして正確に捉えることができます。健康診断の結果を受け取ったら、ぜひ両方の数値に目を向けてみてください。
「要精密検査」を放置した場合に起こりうる5つの深刻なリスク
健康診断で「要精密検査」という結果を受け取っても、特に自覚症状がないと「まだ大丈夫だろう」と後回しにしてしまうお気持ちは、非常によく分かります。
しかし、HbA1cが高いという結果は、自覚症状がない水面下で、ご自身の体の中で静かに進行しているかもしれない深刻な病気のサインです。
このサインを見逃してしまうと、将来的に生活の質を大きく損なう病気につながる可能性があります。ここでは、HbA1cが高い状態を放置した場合に起こりうる具体的なリスクについて、専門医の立場から詳しく解説します。

失明や透析につながる糖尿病三大合併症(網膜症・腎症・神経障害)
HbA1cが高い状態、つまり高血糖の状態が続くと、全身の細い血管(毛細血管)が少しずつ傷つき、詰まっていきます。
特にこの影響を受けやすいのが、毛細血管が豊富な目、腎臓、神経であり、これらが障害されることを「糖尿病三大合併症」と呼びます。
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糖尿病網膜症 目の奥にある網膜の血管が傷つき、視力の低下を招きます。進行すると失明に至ることもあり、日本では成人の失明原因の上位を占める深刻な病気です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づいた時にはかなり進行しているケースも少なくありません。
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糖尿病腎症 腎臓にある、血液をろ過して老廃物を取り除くための毛細血管がダメージを受け、腎臓の機能が低下します。進行すると体内の毒素を排出できなくなり、週に数回の人工透析が必要になります。現在、日本で新たに人工透析を始める方の原因として最も多いのが、この糖尿病腎症です。
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糖尿病神経障害 手足の末端の神経が障害され、「しびれ」や「痛み」、「感覚が鈍くなる」といった症状が現れます。足の感覚が鈍くなることで、靴擦れや小さな怪我、火傷に気づきにくくなります。その傷口から細菌が入り、組織が壊死する「壊疽(えそ)」を起こし、最悪の場合、足を切断しなければならないこともあります。
これら三大合併症は、いずれも初期には自覚症状が乏しいまま静かに進行するのが特徴です。
| 合併症の種類 | 障害される場所 | 主な症状・結果 |
|---|---|---|
| 糖尿病網膜症 | 目の網膜の血管 | 視力低下、かすみ目、失明 |
| 糖尿病腎症 | 腎臓の毛細血管 | むくみ、だるさ、人工透析 |
| 糖尿病神経障害 | 手足などの末梢神経 | しびれ、痛み、感覚麻痺、足の壊疽 |
心筋梗塞や脳卒中のリスクが健康な人の数倍に高まる理由
高血糖の影響は、細い血管だけに限りません。心臓や脳につながる太い血管にも深刻なダメージを与え、「動脈硬化」を急速に進行させます。動脈硬化とは、血管が弾力性を失って硬く、もろくなる状態のことです。
高血糖の状態が続くと、血管の内側の壁が傷つきやすくなります。その傷ついた部分から、血液中の悪玉コレステロールなどが入り込み、血管の壁にプラークと呼ばれるコブを形成します。
このプラークが大きくなると血管が狭くなり、血流が悪化します。さらに、プラークが何かのきっかけで破れると、それを修復するために血の塊(血栓)ができ、血管を完全に詰まらせてしまうことがあります。
- 心筋梗塞・狭心症 心臓に血液を送る「冠動脈」でこれが起これば、心筋梗塞や狭心症を発症します。
- 脳梗塞 脳の血管で起これば、脳梗塞を引き起こします。
また、高血糖はしばしば脂質異常症(特に中性脂肪が高い状態)を伴います。高血糖と高中性脂肪が重なると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」という状態が悪化することが知られています。
近年の複数の研究を統合した分析では、このインスリン抵抗性の度合いを示す「トリグリセリド-グルコース(TyG)インデックス」という指標が高い人ほど、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気のリスクが著しく高まることが報告されています。
がんや認知症、歯周病など全身に及ぶ影響
糖尿病がもたらすリスクは、これまで述べた合併症や動脈硬化性の病気だけではありません。全身のさまざまな病気との関連性が明らかになっています。
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がん 高血糖の状態や、それを補うために過剰に分泌されるインスリンが、一部のがん細胞の増殖を促進する可能性が考えられています。特に、大腸がん、肝臓がん、すい臓がんなどとの関連が報告されています。
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認知症 脳の血管の動脈硬化が、血管性認知症のリスクを高めることが分かっています。また、インスリンは脳の神経細胞の働きにも関わっており、その作用異常がアルツハイマー型認知症の発症に関与する可能性も指摘されています。
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歯周病 糖尿病と歯周病は、互いに悪影響を及ぼしあう関係にあります。高血糖の状態では体の免疫力が低下し、口の中で細菌が繁殖しやすくなるため、歯周病が悪化します。逆に、歯周病による慢性の炎症は、インスリンの働きを妨げ、血糖コントロールを悪化させる原因にもなります。このため、歯周病は「糖尿病の6番目の合併症」とも呼ばれています。
その他にも、免疫力の低下による感染症(肺炎、尿路感染症など)のリスク増加や、骨がもろくなる骨粗しょう症のリスクも高まります。
精密検査で何をするのか?受診する科や検査内容、費用について
「要精密検査」の通知を受け取ったら、まずは医療機関を受診することが、将来の健康を守るための最も重要な第一歩です。どこで、どのような検査をするのか、具体的な流れを知っておくと安心して受診できるでしょう。
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受診する科 まずは、かかりつけの内科にご相談ください。より専門的な診断や治療が必要と判断された場合は、糖尿病内科や内分泌内科といった専門の診療科を紹介されることがあります。糖尿病を専門とする医師は、より詳細な評価を行い、個々のライフスタイルに合わせた治療計画を立てることを目指します。
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主な検査内容 精密検査では、糖尿病かどうかを確定診断するとともに、すでに体の他の部分に影響が出ていないかを総合的に調べます。
| 検査項目 | 検査内容 |
|---|---|
| 問診・診察 | 食生活、運動習慣、家族の病歴、自覚症状などを詳しく伺います。 |
| 身体測定 | 身長、体重、BMI、血圧、腹囲などを測定し、肥満度などを評価します。 |
| 血液検査 | HbA1cや血糖値を再測定するほか、脂質、肝機能、腎機能なども調べます。 |
| 尿検査 | 尿に糖やたんぱく質が出ていないかを確認し、腎臓への負担を調べます。 |
| ブドウ糖負荷試験(OGTT) | 必要に応じて行われます。空腹時にブドウ糖液を飲み、一定時間後の血糖値の変動を見ることで、糖尿病かその手前の境界型かを正確に診断し、「かくれ糖尿病」を見つけ出します。 |
- 費用の目安 これらの検査はすべて健康保険が適用されます。自己負担が3割の方の場合、初診で血液検査や尿検査などを行うと、費用は3,000円〜5,000円程度が一般的です。ブドウ糖負荷試験など追加の検査を行う場合は、費用が変動します。詳しくは受診する医療機関に直接お問い合わせください。
HbA1cを下げるために明日から始めるべき具体的な3つの行動
健康診断で「HbA1cが高い」という結果を受け、ご自身の体のこと、そして将来のことに不安を感じていらっしゃるかもしれません。
「まだ自覚症状もないし大丈夫」と思わずに、この結果を生活習慣を見直す良い機会と捉えることが非常に重要です。
HbA1cの数値を改善するためには、特別なことではなく、日々の小さな積み重ねが大切になります。ここでは糖尿病専門医の視点から、明日からすぐに始められる具体的な3つの行動、「食事」「運動」「医療との連携」について詳しく解説します。

まずは見直したい食生活のポイント(食べる順番・糖質の種類)
HbA1cを下げるための基本は、なんといっても食生活の見直しです。血糖値の急激な上昇、いわゆる「血糖値スパイク」を抑えることが、すい臓への負担を減らし、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを助ける鍵となります。
1. 食べる順番を工夫する「ベジタブルファースト」 食事の際は、まず野菜やきのこ、海藻類など食物繊維が豊富なものから食べ始めましょう。これは「ベジタブルファースト」と呼ばれ、科学的にも効果が証明されている食事法です。
食物繊維は、後から入ってくる糖質の消化・吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ防波堤のような役割を果たしてくれます。
- 理想的な食べる順番
- 副菜(野菜、きのこ、海藻など) 最初に食物繊維を摂り、血糖値の上昇を穏やかにします。
- 主菜(肉、魚、卵、大豆製品など) タンパク質や脂質が満腹感を与え、主食の食べ過ぎを防ぎます。
- 主食(ごはん、パン、麺類など) 最後に食べることで、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
2. 血糖値を上げにくい糖質を選ぶ 同じ糖質量でも、食品の種類によって血糖値の上がりやすさは異なります。できるだけ血糖値の上昇が緩やかな「低GI食品」を選ぶ習慣をつけましょう。GI(グリセミック・インデックス)とは、食後の血糖値の上昇度合いを示す指標のことです。
日々の食事で、高GI食品を低GI食品に置き換える意識が大切です。
| これまでの食事(高GI) | これからの選択肢(低GI) |
|---|---|
| 白米 | 玄米、もち麦ごはん、雑穀米 |
| 食パン、菓子パン | 全粒粉パン、ライ麦パン |
| うどん、そうめん | そば、パスタ(全粒粉) |
特に注意したいのが、ジュースや加糖コーヒーなどの甘い飲み物です。液体であるため体に吸収されるスピードが非常に速く、血糖値を急激に上げてしまいます。飲み物はお茶や水などを基本にすることをおすすめします。
忙しくても続けられる効果的な運動療法のコツ(種類・時間・頻度)
食事療法と車の両輪となるのが運動療法です。運動には、2つの大きなメリットがあります。
- 短期的効果:血液中のブドウ糖を筋肉が直接エネルギーとして消費するため、血糖値が下がります。
- 長期的効果:運動を続けることで、インスリンの効き目が良くなる(インスリン抵抗性の改善)体質に変わっていきます。
1. 運動の種類:有酸素運動+筋力トレーニング 筋肉は、体の中で最も多くのブドウ糖を消費してくれる臓器です。この筋肉を効率よく使うために、2種類の運動を組み合わせることが理想的です。
- 有酸素運動 ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など。脂肪燃焼や心肺機能の向上に効果的です。
- 筋力トレーニング(レジスタンス運動) スクワット、腕立て伏せなど。筋肉量を増やすことで、糖を消費しやすい、いわば「燃費の良い体」になります。
まずは続けやすいものからで構いません。通勤時に歩く時間を増やすことから始めてみましょう。
2. 運動の時間と頻度
- 目標 週に合計150分以上の有酸素運動を目指しましょう。(例:1回30分を週5日)
- タイミング 食後30分〜1時間後に行うと、食事によって上昇した血糖値を効率よく下げることができます。
- 忙しい方へ まとまった時間が取れなくても、「10分程度の運動を1日数回」に分けるだけでも効果はあります。「今より10分多く体を動かす」ことを意識してみましょう。
- エレベーターやエスカレーターを階段にする
- 通勤時に一駅手前で降りて歩く
- テレビを見ながら足踏みやストレッチをする
薬物療法はいつから必要?治療開始の目安と薬の種類
「一度薬を飲み始めたら、一生やめられないのでは?」と心配される方も少なくありません。しかし、薬物療法はあくまで生活習慣改善のサポート役です。HbA1cを良好な状態で維持し、将来の深刻な合併症を防ぐための大切な治療なのです。
1. 治療開始の目安 食事療法や運動療法を2〜3ヶ月続けてもHbA1cの改善が不十分な場合や、健康診断の時点で数値が非常に高い場合(例:HbA1c 8.0%以上)には、合併症のリスクを抑えるために早期からの薬物療法を検討します。
治療開始のタイミングは、年齢や腎臓・肝臓の機能、他の病気の有無なども考慮して、医師が総合的に判断します。
2. 薬の種類 糖尿病の治療薬には、様々な作用を持つ種類があります。
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経口血糖降下薬(飲み薬) インスリンの分泌を促す薬、インスリンの効きを良くする薬、糖の吸収や排泄を調整する薬など、多くの種類があります。患者さん一人ひとりの体の状態に合わせて使い分けます。
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注射薬(インスリン、GLP-1受容体作動薬) 飲み薬だけでは血糖コントロールが難しい場合に使用します。
近年では、GLP-1受容体作動薬という種類の薬も注目されています。これには注射薬だけでなく、最近の研究で有効性が示されたオルホグリプロンのような飲み薬タイプも登場しています。特に肥満を伴う2型糖尿病の患者さんにおいて、HbA1cの改善とともに体重減少効果も期待できるため、治療の選択肢が広がっています。
自己判断で薬の量を調整したり中断したりすることは、血糖値の急激な変動を招き非常に危険です。必ず医師の指示に従ってください。
治療と仕事、プライベートを両立するための考え方
HbA1cの改善は、短距離走ではなくマラソンのようなものです。治療を長く、無理なく続けるためには、完璧を目指しすぎないことが何よりも大切です。
1. 100点満点ではなく、60〜70点を目指す 毎日完璧な食事や運動を続けるのは困難です。会食や旅行などで食生活が乱れる日があっても、自分を責める必要はありません。「昨日は食べ過ぎたから、今日は少し歩く時間を増やそう」というように、柔軟に考えて調整していきましょう。大切なのは、中断せずに続けることです。
2. 小さな目標設定と成功体験 「体重を1ヶ月で1kg減らす」「今週は3日間、階段を使う」など、達成可能な小さな目標を立てましょう。目標をクリアする達成感が、治療を続けるモチベーションになります。
3. 一人で抱え込まない ご自身の健康状態について、可能であればご家族や信頼できる方に話してみましょう。周囲の理解や協力は、大きな支えになります。
また、かかりつけ医や管理栄養士、保健師などの専門家は、あなたの治療をサポートするチームです。食事や運動で困ったこと、仕事との両立で悩んでいることなど、何でも気軽に相談してください。ストレスも血糖値を上げる原因になるため、趣味やリラックスできる時間を作り、心身ともに健やかに過ごすことも治療の大切な一環です。
まとめ
今回は、健康診断で「HbA1cが高い」と指摘された際の数値の見方、放置するリスク、そして具体的な改善策について解説しました。
自覚症状がないと「まだ大丈夫」と思いがちですが、その数値はあなたの体が発している、未来の健康を守るための重要なサインです。このサインを決して見逃さず、生活習慣を見直す絶好の機会と捉えましょう。
食事の順番を工夫する、今より10分多く歩いてみるなど、明日からできる小さな一歩が未来を変えます。 そして大切なのは、一人で抱え込まずに専門家へ相談することです。まずはかかりつけ医に相談し、ご自身の体を正しく知ることから始めてみてください。それが、10年後、20年後の健康な自分のための、重要な第一歩となります。
参考文献
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- Horn DB, Ryan DH, Kis SG, Alves B, Mu Y, Kim SG, Aberle J, Bain SC, Allen S, Sarker E, Wu Q, Stefanski A, Jouravskaya I and ATTAIN-2 Trial Investigators. “Orforglipron, an oral small-molecule GLP-1 receptor agonist, for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (ATTAIN-2): a phase 3, double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled trial.” Lancet (London, England) 406, no. 10522 (2026): 2927-2944.
- Zhang C, Li M, Liu L, Zhong Y, Xie Y, Liao B, Feng J and Deng L. “Triglyceride-glucose index as a novel predictor of major adverse cardiovascular events in patients with coronary revascularization: a meta-analysis of cohort studies.” Annals of medicine 58, no. 1 (2026): 2607796.
