「最近疲れやすい・動悸がする」それって甲状腺の病気かも?症状セルフチェック
「最近、しっかり休んでも疲れが抜けない」「理由もなく心臓がドキドキする」。そんな原因不明の不調を、年齢やストレスのせいだと諦めていませんか?そのサイン、実は首の付け根にある「甲状腺」という小さな臓器が発しているのかもしれません。
甲状腺の病気は特に女性に多く見られますが、その症状は更年期障害やうつ病ともよく似ているため、見過ごされがちなのが特徴です。しかし、放置すれば心臓への負担や不妊の原因となることも。適切な治療で改善できるからこそ、まずは自分の体の声に耳を傾けることが大切です。
この記事では、動悸や体重の変化など、甲状腺の異常を示す18のサインをセルフチェック形式で詳しく解説します。あなたの不調の本当の原因を見つけ、すこやかな毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
その「だるい・動悸・痩せる」症状、甲状腺が原因かも?簡単セルフチェック
「最近、しっかり休んでも疲れが抜けない」 「理由もないのに、心臓がドキドキして不安になる」 「食事の量は変わらない、むしろ増えたのに体重が減ってきた」
このような原因不明の不調は、多くの方が経験するかもしれません。 しかし、その症状は単なる疲れやストレスではなく、首の付け根にある「甲状腺」という臓器からのサインである可能性があります。
甲状腺の病気は特に女性に多く見られますが、その症状が多彩なため、他の病気や一時的な体調不良と間違われやすいのが特徴です。 ですが、適切な治療を受ければ症状は改善に向かうことがほとんどです。 まずはご自身の体に起きている変化に目を向け、一緒に原因を探っていきましょう。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)でよく見られる10のサイン
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を「甲状腺機能亢進症」と呼びます。 代表的な病気がバセドウ病です。
甲状腺ホルモンは、体のエネルギー消費を活発にする「アクセル」の役割を担います。 このホルモンが過剰になると、体は常にマラソンをしているような状態に陥ります。 そのため、エネルギーはどんどん消費されますが、体は疲弊してしまいます。
【甲状腺機能亢進症のセルフチェックリスト】
- 動悸・頻脈
- 安静時でも心臓の鼓動を強く感じ、脈が速くなります(1分間に100回以上が目安)。
- 体重減少
- 食欲が増してたくさん食べているにもかかわらず、体重が減り続けます。
- 手指の震え
- コップを持つ、字を書くといった日常的な動作で、指先が細かく震えます。
- 暑がり・多汗
- 周囲の人が快適に過ごしていても自分だけが暑く感じ、大量の汗をかきます。
- 息切れ
- 以前は問題なかった階段の上り下りなど、少しの運動で息が苦しくなります。
- 全身の倦怠感
- 体は興奮状態にあるにも関わらず、強い疲労感やだるさを感じます。
- イライラ・落ち着きのなさ
- 感情のコントロールが難しくなり、ささいなことで怒りっぽくなります。
- 軟便・下痢
- 腸の動きが過剰に活発になり、便が軟らかくなったり、下痢をしやすくなります。
- 首の腫れ(甲状腺腫)
- 首の付け根、のどぼとけの下あたりが全体的に腫れてきます。
- 眼球突出
- 目が前に押し出されるように感じたり、まぶたが腫れぼったくなったりします。(バセドウ病に特徴的)
甲状腺機能低下症(橋本病など)に特徴的な8つの症状
甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態が「甲状腺機能低下症」です。 その原因として最も多いのが橋本病という自己免疫疾患です。
機能亢進症とは逆に、体の「アクセル」が踏めなくなり、全身の活動が鈍くなります。 症状の現れ方が非常にゆっくりなため、年齢のせいだと見過ごされやすい傾向にあります。
【甲状腺機能低下症のセルフチェックリスト】
- 全身の倦怠感・眠気
- 十分な睡眠をとっても常に眠く、体全体が重く感じられます。
- 寒がり
- 他の人よりも寒さを強く感じ、特に手足の冷えがひどくなります。
- 体重増加
- 食事量は増えていない、むしろ減っているのに体重が増え、むくみも現れます。
- 皮膚の乾燥
- 汗をかきにくくなり、肌がカサカサと乾燥して荒れやすくなります。
- 便秘
- 腸の動きが鈍くなることで、頑固な便秘に悩まされるようになります。
- 無気力・記憶力低下
- 何事にもやる気が起きず、物忘れが増えたり、思考力が低下したりします。
- 声のかすれ
- 声帯がむくむことで、声が低くなったり、かすれたりすることがあります。
- 脱毛
- 髪の毛が抜けやすくなったり、眉毛が薄くなったりします。
橋本病は、本来体を守るはずの免疫システムが、誤って自分の甲状腺を攻撃してしまう自己免疫疾患です。 近年の研究では、腸内環境の乱れ(つまり、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れること)が免疫システムに影響を与え、こうした自己免疫疾患の発症に関わる可能性も指摘されています。
更年期障害?それとも甲状腺?症状の見分け方とポイント
40代から50代の女性に現れる甲状腺疾患の症状は、更年期障害と非常によく似ています。 「だるい」「汗をかく」「イライラする」といった共通の症状があるため、自己判断は禁物です。 しかし、注意深く観察すると特徴的な違いも見えてきます。
| 症状 | 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺機能低下症 | 更年期障害 |
|---|---|---|---|
| 体重 | 食欲旺盛なのに減少 | 食欲不振なのに増加 | 変化しないか、増加傾向 |
| 脈拍 | 速くなる(頻脈) | 遅くなる(徐脈) | 速くなることがある |
| 体感温度 | 持続的に暑がり | 持続的に寒がり | ほてりと冷えが混在(ホットフラッシュ) |
| 特徴的な症状 | 手指の震え、眼球突出 | 強いむくみ、皮膚の乾燥 | 顔のほてり、不正出血 |
見分けるための重要なポイントは、体重の明らかな変化や脈拍の変化、そして「首の腫れ」「目の症状」といった甲状腺疾患に特有のサインです。
また、甲状腺ホルモンは気分の安定にも深く関わっています。 うつ病の治療を受けていてもなかなか改善しない場合、背景に甲状腺機能の乱れが隠れていることもあります。 実際、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値がうつ病の治療薬の効果に影響するという研究報告もあるほどです。 「年齢のせい」「気分の問題」と片付けずに、一度は甲状腺の検査を検討することが大切です。
1つでも当てはまったら要注意!医師への相談タイミング
これらのセルフチェックは、あくまでご自身の状態を知るための目安です。 正確な診断には、医療機関での血液検査などが不可欠です。 もし、以下のような状況にあれば、お一人で悩まずに専門医に相談してください。
すぐに相談を検討していただきたいケース
- チェックリストの項目に複数当てはまる。
- 症状によって、仕事や家事などの日常生活に支障が出ている。
- 首の付け根に明らかな腫れやしこりを触れる。
- 目が前に出てきた、物が二重に見えるなど、目の変化に気づいた。
- 安静にしていても動悸が激しく、息苦しさを感じる。
甲状腺の病気を放置すると、心臓に大きな負担をかけ不整脈や心不全の原因になったり、脂質異常症(つまり、血液中の悪玉コレステロールなどが増える状態)を悪化させて動脈硬化を進めたりすることがあります。 また、不妊の原因となることも少なくありません。
体の不調だけでなく、心の不調も甲状腺ホルモンのバランスの乱れが原因かもしれません。 気になる症状があれば、それは体からの大切なメッセージです。 ぜひお気軽に、内科や内分泌内科にご相談ください。 一緒に、すこやかな毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
バセドウ病と橋本病は何が違う?原因と特徴を徹底解説
「バセドウ病」と「橋本病」。どちらも甲状-腺の病気として有名です。 これらは、体を守るはずの免疫が自分を攻撃する「自己免疫疾患」という共通点があります。 しかし、現れる症状は「ホルモンが出過ぎる」「ホルモンが足りなくなる」と正反対です。
なぜ同じ原因から正反対の病気が生まれるのでしょうか。 ご自身の不調の原因を理解するために、まずは2つの病気の根本的な違いを知ることが大切です。 ここでは、それぞれの病気の仕組みや特徴、見分け方を専門医の視点から詳しく解説します。

ホルモンが出過ぎるバセドウ病の原因とメカニズム
バセドウ病は、甲状-腺ホルモンが過剰に作られる病気(甲状-腺機能亢進症)の代表です。 この病気の引き金となるのは、免疫システムの異常によって作られる特殊な物質です。 その物質は「TSH受容体抗体(TRAb)」と呼ばれます。
本来、甲状-腺は脳から出る司令(甲状-腺刺激ホルモン:TSH)を受けてホルモンを作ります。 しかし、TSH受容体抗体は、この司令塔であるTSHになりすましてしまいます。 そして、甲状-腺にあるホルモンの受け皿を、無秩序に刺激し続けてしまうのです。
その結果、甲状-腺は「もっとホルモンを出せ」という偽の命令を受け続けます。 これにより甲状-腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が異常に高まります。 体は常に交感神経が興奮した状態となり、動悸や体重減少などの症状が現れるのです。
ホルモンが足りなくなる橋本病の原因とメカニズム
橋本病は、バセドウ病とは逆に甲状-腺ホルモンが不足する病気(甲状-腺機能低下症)の主な原因です。 正式には「慢性甲状-腺炎」と呼ばれ、こちらも自己免疫疾患の一つです。 橋本病では、免疫細胞が甲状-腺の組織そのものを「異物」と誤って認識してしまいます。
そして、甲状-腺に対して持続的に攻撃を仕掛け、慢性的な炎症を引き起こします。 その結果、甲状-腺の細胞は少しずつ破壊され、機能が徐々に低下していきます。 甲状-腺ホルモンを十分に作れなくなり、全身の代謝が落ちてしまうのです。
近年の研究では、こうした自己免疫疾患の発症に「腸内環境の乱れ」が関わる可能性が指摘されています。 腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れること(ディスバイオシス)が、全身の免疫システムに影響を与えるという考え方です。 私たちの体は、免疫、内分泌(ホルモン)、そして腸内環境が互いに連携しあって健康を保っているのです。
症状・なりやすい人・治療法から見る2つの病気の決定的な違い
バセドウ病と橋本病は、原因は同じ自己免疫の異常ですが、性質や治療法は大きく異なります。 両者の違いを正しく理解し、ご自身の状態を把握するための参考にしてください。 以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 項目 | バセドウ病(甲状-腺機能亢進症) | 橋本病(甲状-腺機能低下症) |
|---|---|---|
| 甲状-腺ホルモン | 過剰になる | 不足することがある(機能正常な場合も多い) |
| 主な症状 | 動悸、体重減少、手の震え、多汗、イライラ、眼球突出 | 倦怠感、無気力、体重増加、むくみ、寒がり、便秘 |
| なりやすい人 | 20〜30代の女性に多い | 30〜40代以降の女性に多い |
| 甲状-腺の腫れ | 全体的に柔らかく腫れることが多い(びまん性甲状-腺腫) | 硬く、ゴツゴツと腫れることがある |
| 精神症状 | 焦燥感、落ち着きのなさ、不眠 | 抑うつ気分、思考力低下、物忘れ |
| 血液検査 | TSH低値、FT4/FT3高値、TRAb陽性 | TSH高値、FT4低値、抗TPO抗体・抗Tg抗体陽性 |
| 治療の目的 | 甲状-腺ホルモンの過剰な分泌を抑える(抗甲状-腺薬など) | 不足している甲状-腺ホルモンを補う(甲状-腺ホルモン薬) |
バセドウ病は体の活動性が高まり、橋本病は逆に活動性が低下するイメージです。 ただし、橋本病の方が病気の初期に一時的に甲状-腺が壊れ、蓄えられていたホルモンが漏れ出すことがあります。 この場合、一時的にバセドウ病に似た動悸などの症状が出ることがあり、診断には注意が必要です。
首の腫れや目の症状は危険なサイン?見逃してはいけない甲状-腺眼症
甲状-腺の病気では、全身の症状に加えて、首や目に特徴的なサインが現れることがあります。 これらのサインは病気を発見する重要な手がかりとなるため、見逃さないようにしましょう。
1. 首の腫れ(甲状-腺腫) 首の前面、のどぼとけの下あたりが腫れてくることがあります。 これはバセドウ病でも橋本病でも見られる症状です。 多くは甲状-腺全体が腫れますが、時にはしこり(結節)ができることもあります。 「鏡を見ていて首の形が変わった」「ネクタイやネックレスがきつくなった」などの変化はサインです。
2. 目の症状(甲状-腺眼症) 特にバセドウ病に特徴的な症状として「甲状-腺眼症」があります。 これは、甲状-腺を攻撃する自己抗体が、目の奥にある脂肪組織や筋肉も攻撃するために起こります。
【甲状-腺眼症の主な症状】
- まぶたが腫れぼったくなる
- 眼球が前に出てくる(眼球突出)
- 目が乾く、光をまぶしく感じる
- 物が二重に見える(複視)
これらの症状は、見た目の変化だけでなく、視力に影響を及ぼす可能性もあります。 また、喫煙は甲状-腺眼症を発症させ、悪化させる極めて重要な危険因子です。 目の症状が気になる場合は、当院のような内科・内分泌内科と眼科の専門医が連携して治療を進めることが非常に重要です。 気になるサインがあれば、放置せずにご相談ください。
医療機関では何をする?検査から治療、その後の生活までの完全ガイド
原因がわからないだるさや動悸などの症状が続くと、「何か悪い病気ではないか」と不安に感じることと思います。 もし甲状腺の病気が疑われる場合、医療機関ではどのようなことが行われるのでしょうか。
ここでは、クリニックを受診してから診断が確定するまでの流れを解説します。 さらに、具体的な検査内容、治療法の選択肢からその後の生活で気をつけることまで、一つひとつ丁寧に説明します。 先の見えない不安を解消し、安心して治療の一歩を踏み出せるよう、一緒に確認していきましょう。

初診から診断までの流れと検査内容
クリニックを受診いただくと、まずは詳しい問診から始まります。 いつからどのような症状があるか、過去の病歴やご家族の病気、現在服用中のお薬などについてお伺いします。 その後、医師が首を触って甲状腺の腫れやしこりの有無を確認する触診や、脈拍、血圧測定などの身体診察を行います。
そして、診断を確定するために、以下のような精密検査を進めていきます。
-
血液検査 甲状腺の病気の診断で、最も重要な検査です。 血液中のホルモンの量を調べることで、甲状腺の活動状態を正確に把握します。
- 甲状腺ホルモン(FT4, FT3) 実際に体の中で働いているホルモンの量です。 体の代謝を調整する「アクセル」の役割を担っており、この数値で甲状腺の機能が亢進しているか、低下しているかを直接評価します。
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH) 脳の下垂体から分泌され、甲状腺に「ホルモンを出せ」と指令を送るホルモンです。 この数値の異常から、不調の原因が甲状腺自体にあるのか、あるいは脳からの指令系統にあるのかを判断する重要な手がかりとなります。
- 自己抗体(TRAb, 抗TPO抗体など) バセドウ病や橋本病の原因となる、自分自身の体を攻撃してしまう物質です。 この抗体の有無を調べることで、症状の背景に自己免疫の異常が隠れていないかを判断します。
-
超音波(エコー)検査 首にゼリーを塗り、超音波の出る器具を当てて甲状腺の内部を画像で観察します。 痛みは全くなく、甲状腺の大きさや形、しこり(結節)の有無などを詳細に確認できます。 また、バセドウ病では甲状腺内の血流が著しく増加するため、その血流の状態を色で表示して診断の助けとします。
これらの検査は、客観的なデータに基づいて正確な診断を下すために不可欠です。 例えば、動物医療の研究においても、血液中のホルモン測定が甲状腺疾患の診断の基本とされています。 人の場合も同様に、症状の訴えとこれらの客観的な検査結果を総合的に判断することが非常に重要なのです。
治療法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット(薬物療法・アイソトープ治療・手術)
甲状腺の病気の治療法は、「バセドウ病」か「橋本病」かによって大きく異なります。 それぞれの治療法の選択肢と長所・短所を理解し、ご自身のライフスタイルに合った方法を医師と一緒に選んでいくことが大切です。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の主な治療法
| 治療法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 薬物療法 (抗甲状腺薬) |
・外来で手軽に始められる ・手術の傷が残らない ・治療実績が豊富 |
・治療期間が長い(最低1~2年以上) ・副作用(皮膚のかゆみ、肝機能障害など)の可能性 ・服薬中止後の再発率が比較的高め |
| アイソトープ治療 (放射性ヨウ素内用療法) |
・カプセルを飲むだけで負担が少ない ・薬の内服から解放される可能性が高い ・再発が少ない |
・将来的に甲状腺機能低下症になることが多い ・妊娠中や授乳中、近い将来妊娠を希望する場合は不可 ・実施できる医療機関が限られる |
| 手術 (甲状腺摘出術) |
・最も確実で治療期間が短い ・甲状腺が非常に大きい、がんの合併が疑われる場合に適している |
・入院が必要で、首に傷が残る ・合併症(声のかすれ、カルシウム代謝異常など)のリスク |
橋本病(甲状腺機能低下症)の主な治療法
橋本病と診断されても、甲状腺の機能が正常範囲に保たれている場合は、すぐには治療を開始せず、定期的な経過観察を行います。 機能が低下し、ホルモンが不足している場合にのみ、治療の対象となります。
- 甲状腺ホルモン薬の内服 不足している甲状腺ホルモンを、お薬で補う非常にシンプルな治療法です。 適切に量を調整すれば副作用はほとんどなく安全ですが、多くの場合、生涯にわたって内服を続ける必要があります。
これらの病気の背景には、自己免疫の異常が深く関わっています。 近年の研究では、免疫システムやホルモン分泌、さらには腸内環境までが複雑に関わり合っていることが示唆されています。 治療は単にホルモン値を正常化するだけでなく、体全体のバランスを整える視点も大切になります。
治療にかかる費用と期間、使える医療費助成制度
治療を始めるにあたり、費用や期間は誰もが気になるところです。 甲状腺の病気の治療は基本的に健康保険が適用されるため、自己負担は通常3割(年齢や所得により1〜2割)となります。
費用の目安(3割負担の場合)
- 初診時 問診、診察、血液検査、超音波検査などを含め、5,000円〜10,000円程度が目安です。
- 通院・薬代(月額) 薬物療法の場合、定期的な診察と血液検査、薬代を合わせて月に数千円程度です。
治療期間の目安
- バセドウ病 薬物療法の場合、症状の改善は数週間で感じられますが、再発を防ぐために最低でも1年半〜2年は服薬を続けるのが一般的です。
- 橋本病 甲状腺ホルモン薬を飲み始める場合、生涯にわたって継続することが基本となります。
使える医療費助成制度 アイソトープ治療や手術のように費用が高額になる場合や、長期の通院で負担が大きくなる場合には、公的な助成制度を利用できます。
- 高額療養費制度 1ヶ月の医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻される制度です。
- 医療費控除 1年間の医療費の合計が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合に、確定申告を行うことで所得税の一部が還付される制度です。
これらの制度を上手に活用することで、経済的な負担を軽減しながら安心して治療に専念できます。 ご不明な点は、お気軽にクリニックの窓口や医師にご相談ください。
治療中の食事(ヨウ素)や運動で気をつけるべきこと
治療の効果を高め、より良い体調を維持するためには、日常生活でのセルフケアも重要です。 特に食事と運動については、いくつか知っておきたいポイントがあります。
食事で気をつけること(特にヨウ素について)
ヨウ素は甲状腺ホルモンの大切な材料となるミネラルです。 そのため、その摂取量には少し注意が必要です。
- バセドウ病の場合 ヨウ素を過剰に摂取すると、抗甲状腺薬の効果が弱まることがあります。 昆布やひじき、わかめなどの海藻類を毎日大量に食べる、ヨウ素含有のうがい薬を頻繁に使うことは控えましょう。
- 橋本病の場合 こちらもヨウ素の過剰摂取は、甲状腺の働きをかえって悪くしてしまう可能性があります。
ただし、どちらの病気でも「ヨウ素を全く摂ってはいけない」わけではありません。 神経質になりすぎず、特定の食品に偏らないバランスの良い食事を心がけることが最も大切です。
運動で気をつけること
- 症状が強い時期(特にバセドウ病) 動悸や息切れなどがあり、体は常にマラソンをしているような状態です。 心臓に負担がかかるため、激しい運動は絶対に避け、まずは十分な休養をとりましょう。
- 症状が安定している時期 甲状腺機能がコントロールされていれば、基本的に運動の制限はありません。 むしろ、体力維持やストレス解消のために適度な運動は推奨されます。 無理のない範囲で、ウォーキングなどご自身が楽しめる運動を生活に取り入れていきましょう。
治療は医師に任せるだけでなく、ご自身の生活を見直し、主体的に関わることが改善への近道です。 不安なことや疑問に思うことは、どんな些細なことでも主治医に相談してくださいね。
まとめ
今回は、疲れや動悸、体重の変化といった身近な不調の裏に隠れているかもしれない、甲状腺の病気について詳しくご紹介しました。 セルフチェックで当てはまる項目があり、不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
甲状腺の病気は、症状が更年期障害や単なる疲れと似ているため見過ごされやすいですが、血液検査などで原因をはっきりと特定でき、適切な治療で必ず改善に向かう病気です。 「年齢のせいだから」「気分の問題かも」と自己判断せずに、そのサインを見逃さないことが何より大切です。
気になる症状があれば、それはあなたの体からの大切なメッセージです。 一人で抱え込まず、すこやかな毎日を取り戻すための一歩として、ぜひお気軽に内科や内分泌内科へご相談ください。
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