もし災害が起きたら?糖尿病患者さんがカバンに入れておくべき「災害用・緊急ポーチ」の中身について専門医が解説!
「災害用の備えはしている」という方も、糖尿病患者さん特有の準備は万全でしょうか?大地震や豪雨による強いストレス、避難所での炭水化物中心の食事は、血糖値を大きく乱す原因となりかねません。過去の災害では、お薬手帳一枚が命綱になった一方で、人目が気になりインスリン注射ができなかったという切実な声も聞かれました。
この記事では、経口薬、自己注射、インスリンポンプなど、あなたの治療タイプに合わせた「災害用ポーチ」の完全ガイドをお届けします。いざという時に慌てず、あなた自身と大切な家族の命を守るために。本当に必要な備えを、今すぐ一緒に確認していきましょう。
【モノ編】治療タイプ別「災害用ポーチ」ガイド
災害は、いつ、どこで私たちの日常を揺るがすかわかりません。
特に糖尿病の治療を続けている方にとって、災害時の「備え」は、ご自身の命と健康を守るために不可欠です。
災害による強いストレスや、避難所での不規則な食事は、血糖値を大きく乱す原因となります。
お薬が手に入らなくなれば、血糖コントロールはさらに困難になるでしょう。
いざという時に慌てず、ご自身の体を守るために。
日頃から「災害用・緊急ポーチ」を準備しておきませんか。
ご自身の治療タイプに合わせて、ポーチに入れるべき大切なものを一緒に確認していきましょう。

経口薬のみの方へ 最低限備えるべき医薬品と補食リスト
飲み薬で血糖コントロールをされている方は、まずはお薬の確保が最優先です。
災害で交通網が寸断されたり、医療機関が機能しなくなったりすることを想定してください。
ライフラインの復旧や診療の再開には、少なくとも1週間はかかると言われています。
ポーチには最低でも7日分、可能であれば14日分のお薬を入れておくと安心です。
【経口薬治療の方のポーチ:チェックリスト】
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医薬品
- 糖尿病のお薬:7〜14日分
- 普段飲んでいるその他のお薬(高血圧、脂質異常症など)
- お薬手帳(原本、コピー、またはスマートフォンの写真データ)
- 糖尿病連携手帳(お持ちの方)
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補食(低血糖への備え)
- ブドウ糖(10g程度を数個)、またはブドウ糖を含むジュース
- 吸収の早いゼリー飲料、飴など
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その他
- ばんそうこう、消毒液などの簡単な救急セット
- ウェットティッシュなどの衛生用品
お薬手帳は、万が一お薬そのものを持ち出せなかった場合の「命綱」になります。
避難先で初めて会う医療スタッフに、ご自身の治療内容を正確に伝えるための重要な情報源です。
最近の災害でも、お薬手帳があったおかげで速やかにお薬の再処方ができた事例が多く報告されています。
また、低血糖に備える補食は「ブドウ糖」が基本です。
チョコレートやクッキーは脂質が多く、血糖値を上げるのに時間がかかってしまいます。
意識がもうろうとするような低血糖時には、速やかに吸収されるブドウ糖やジュースが最も適しています。
インスリン注射の方へ ポーチに加えるべき針・消毒綿・保冷グッズ
インスリン注射やGLP-1受容体作動薬の自己注射を行っている方は、飲み薬の方の備えに加えて、注射に必要な物品一式を準備しましょう。
特にインスリン製剤は温度管理が重要になります。
【自己注射治療の方のポーチ:追加チェックリスト】
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自己注射関連
- インスリン製剤・GLP-1製剤(使用中のもの1本、未開封の予備1本)
- 注射針(破損や紛失に備え、多めに準備)
- アルコール綿(乾燥しにくい個包装のもの)
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血糖測定関連
- 自己血糖測定器(SMBG)
- 測定チップ、穿刺(せんし)針、穿刺器具
- 予備の電池(必ず準備してください)
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保管・廃棄関連
- 保冷バッグ、保冷剤(夏場は特に必須)
- 使用済み針を安全に捨てるための容器(蓋つきの固いプラスチック容器や空のペットボトルなど)
インスリンは高温や凍結に弱いため、保管には注意が必要です。
災害時は停電で冷蔵庫が使えなくなることも想定し、保冷バッグを活用しましょう。
そして、専門医として特に強調したいのが「使用済み針の安全な廃棄」です。
不適切に廃棄された注射針による針刺し事故は、世界的に大きな公衆衛生上のリスクとなっています。
使用済みの針は医療廃棄物であり、ごみ袋などを突き破って、ご家族やごみ収集作業員の方などを傷つける恐れがあります。
避難所での共同生活では、こうした配慮がご自身と周りの人の安全を守ります。
安全に保管できる頑丈な容器を、必ずポーチに一緒に入れておきましょう。
ポンプ・CGM使用者の方へ バッテリー対策と必須の消耗品リスト
インスリンポンプやCGM(持続血糖測定器)をお使いの方は、機器を動かし続けるための「電力」と「消耗品」の確保が最重要課題です。
これらの電子機器は停電時には使えなくなる可能性があるため、万が一の代替手段の準備が必須となります。
【ポンプ・CGM使用者のポーチ:追加チェックリスト】
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機器の消耗品(7日分以上)
- インスリンポンプの注入セット、リザーバー
- CGMのセンサー、トランスミッター
- 皮膚を保護するフィルム剤、固定用テープ
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電源関連
- 大容量のモバイルバッテリー(常にフル充電を心掛ける)
- 充電ケーブル、アダプター(複数あると安心)
- 乾電池(機器が対応している場合)や乾電池式の充電器
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バックアップ用品(非常に重要です)
- 予備のインスリn注射(ペン型など)と注射針
- 自己血糖測定器(SMBG)一式と予備電池
災害時には、ポンプやCGMが故障したり、電力が尽きたりする事態は十分に起こり得ます。
「いつも通り使えるはず」という思い込みは禁物です。
CGMが使えなくなった場合でも血糖値を確認できるよう、必ず自己血糖測定器(SMBG)も準備してください。
また、ポンプが動かなくなった際に、速やかにペン型インスリン注射に切り替えられるようにしておくことが大切です。
災害時の対応について、日頃から主治医と相談しておくことを強くお勧めします。
中身は定期的に見直しを 医薬品・食品の「ローリングストック」実践法
せっかく準備した災害用ポーチも、いざという時に中身の薬や食品の期限が切れていては意味がありません。
そこでおすすめしたいのが「ローリングストック」という備蓄方法です。
これは、普段から備蓄品を使い、使った分だけ新しく買い足すことで、常に新しい状態を保つ考え方です。
特別なことをするのではなく、日常生活の中に防災を組み込むことができます。
【ローリングストックの実践法】
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医薬品
- 定期受診で新しい薬が処方されたら、ポーチの中の古い薬と入れ替えます。
- ポーチから出した薬を普段の治療で使い、新しい薬をポーチに補充するサイクルを作りましょう。
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食品・消耗品
- ポーチに入れている補食や血糖測定チップも、賞味期限や使用期限が近いものから普段の生活で消費します。
- そして新しいものを購入したら、ポーチに追加します。
この方法なら、無理なく、自然と備えを最新の状態に維持できます。
年に数回、例えば「防災の日(9月1日)」やご自身の誕生日などを「見直しの日」と決めて、ポーチの中身を総点検する習慣をつけると、いざという時にもっと安心です。
【行動編】避難場所・状況別対応マニュアル
災害用の備えを万全にしても、いざという時にどう行動すべきかを知らなければ、その備えを活かすことはできません。災害は、いつ、どこで起こるか予測できません。
だからこそ、避難所、ご自宅、車の中など、それぞれの場所で「もしも」の事態が起きた時に、どのようにご自身の体を守り、治療を続けていくかを知っておくことが、何よりも大切なお守りになります。ここでは、具体的な状況を想定した対応マニュアルをご紹介します。一緒に確認していきましょう。

「避難所」での食事・投薬・プライバシー確保の現実的な工夫
避難所での共同生活は、普段とは全く異なる環境です。特に食事、お薬、プライバシーの面では、糖尿病とともに生きる方にとって大きな課題となることがあります。しかし、ちょっとした工夫と思いやりのある行動で乗り越えられることも少なくありません。
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食事の工夫:炭水化物との上手な付き合い方
避難所で配給される食事は、おにぎりやパン、カップ麺など、どうしても炭水化物に偏りがちです。これらは血糖値を急激に上げやすいため、以下の点を意識してみましょう。- 食べる順番を工夫する
もし可能であれば、備蓄していた魚や豆の缶詰、野菜ジュースなどを先に摂りましょう。その後に炭水化物を食べることで、血糖値の急激な上昇を穏やかにできます。 - 補食を上手に活用する
災害用ポーチに入れたナッツやチーズ、プロテインバーなどを間食として活用し、空腹による一度の食事での食べ過ぎを防ぐことも有効です。
- 食べる順番を工夫する
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投薬とプライバシーの確保
多くの人がいる中でインスリン注射などを行うのは、ためらわれるかもしれません。過去の災害でも、人目が気になってインスリンを打てなかったという声が聞かれました。そんな時は、決して一人で我慢しないでください。- 遠慮なくスタッフに相談する
避難所の運営スタッフや巡回している保健師、看護師に相談してみましょう。「薬を使うためのスペースが欲しい」と伝えれば、救護室や空き部屋を一時的に貸してもらえることがあります。 - 簡易的なスペースを作る
更衣室やトイレの個室を利用するのも一つの手です。また、毛布や段ボールで簡単な仕切りを作るだけでも、気持ちはずいぶん楽になります。
- 遠慮なくスタッフに相談する
災害という極限状況では、心理的なサポートが非常に重要になります。紛争などの人道危機下では、心理社会的サポートが糖尿病管理を改善したという報告もあります。不安やストレスは血糖値にも影響します。一人で抱え込まず、医療スタッフや周りの人に相談することが、心と体の健康を守る第一歩です。
「在宅避難・車中泊」を選択した場合の血糖管理の注意点
ご自宅や車で避難生活を送る場合、プライバシーは保たれやすいですが、避難所とは異なる注意点があります。特に、活動量の低下と限られた環境での生活は、血糖コントロールに大きな影響を与えます。
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エコノミークラス症候群の予防
同じ姿勢で長時間過ごすと、足の血流が悪くなり、血の塊(血栓)ができて肺の血管に詰まる危険な状態(肺塞栓症)を招くことがあります。これを防ぐために、意識的に体を動かしましょう。- 定期的な運動
1時間に1回は車から降りて歩いたり、足踏みをしたりする。 - 足首の運動
座ったままでも、つま先を上げ下げする、足首を回すなどの運動をこまめに行う。 - 十分な水分補給
こまめに水を飲み、血液が濃くなるのを防ぐ。
- 定期的な運動
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食事とインスリン保管の注意点
ライフラインが止まることも想定しておく必要があります。- 食事
電気が使えない場合に備え、カセットコンロや備蓄食料を活用しましょう。活動量が減るため、普段より食事量を少し控える意識も大切です。 - インスリンの保管
インスリンは温度管理が命です。- 夏場
車内は非常に高温になります。必ず保停電時でも使える保冷バッグで保管してください。 - 冬場
インスリンは凍結すると効果がなくなります。外気温が氷点下になる場合は、車内に放置せず、タオルや衣類にくるんで保温しましょう。
- 夏場
- 食事
普段と違う環境では、運動不足や不規則な食事に加え、不安や不眠といったストレスも血糖値を大きく乱す原因となります。できる範囲でこまめに血糖値を測定し、ご自身の状態を把握することが何よりも重要です。
「薬が足りない・流された」緊急時に薬を入手するための具体的なステップ
災害で薬が手元からなくなってしまった時、治療が中断することへの不安は計り知れません。実際に、世界各地の紛争や人道危機では、医薬品の供給不足が糖尿病管理の大きな障壁となっています。しかし、日本の災害時には、お薬を受け取るための特別な仕組みがあります。落ち着いて、以下のステップで行動しましょう。
| ステップ | 具体的な行動 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 公的な情報を集める | まずは、避難所の救護所や巡回している医療チーム、役場の災害対策本部に相談します。そこで、診療を行っている医療機関や薬局の情報を得てください。 | デマに惑わされず、公的な情報源を頼ることが最も確実です。 |
| 2. 自分の情報を準備する | お薬手帳(アプリも可)や、薬の包装、診察券など、ご自身の治療内容がわかるものをできるだけ集めます。それがなくても、薬の名前や量を思い出してメモしておきましょう。 | お薬手帳は、あなたの大切な「医療のカルテ」です。これがあるだけで、かかりつけ医でなくても薬の処方が格段にスムーズになります。 |
| 3. 医療機関・薬局へ向かう | 教えてもらった医療機関や薬局へ向かいます。災害時には、特例として、処方箋がなくても、医師の判断でお薬を受け取れる場合があります。 | 薬の在庫には限りがあるかもしれません。事前に電話などで状況を確認できると、より安心です。焦らず、安全を確保して向かってください。 |
決して一人で諦めないでください。あなたの治療を支えるための支援体制が用意されています。まずは公的な窓口に相談することを忘れないでください。
「かかりつけ医と連絡不能」の時に頼るべき情報源と相談先
災害時には、いつも頼りにしているかかりつけのクリニックが被災したり、電話が繋がらなくなったりすることがあります。そんな孤立した状況でも、あなたを支える情報源や相談先は必ずあります。
これは、近年の新型コロナウイルス感染症の流行時にも見られた課題で、大規模な混乱が起きると、プライマリケア(身近な医療)との連携が一時的に途絶えてしまうことがあります。パニックにならず、以下の公的な支援ネットワークを頼ってみてください。
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公的な相談窓口
- 避難所の救護所・医療班
まずはこちらに相談しましょう。地域の医療情報を最も早く、正確に把握しています。 - 市区町村の災害対策本部・保健所
電話や窓口で、診療可能な医療機関のリストなどを提供しています。 - 災害拠点病院
各地域に指定されている、災害時の医療の中心となる病院です。重症患者さんを優先しますが、情報提供や相談も受け付けています。
- 避難所の救護所・医療班
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情報収集の方法
- 自治体の公式サイトやSNS
正確な情報が随時更新されます。スマートフォンの充電を確保し、こまめに確認しましょう。 - 災害用ラジオ放送
地域のコミュニティFMなどでは、きめ細かな生活情報や医療情報が放送されることがあります。
- 自治体の公式サイトやSNS
そんな時こそ、公的な支援ネットワークや情報網を最大限に活用することが、治療を継続し、ご自身の健康を守るための鍵となります。遠慮せずに、助けを求めてください。
【連携編】あなたと家族の「チーム防災」計画
災害という非常事態は、私たちの日常を根底から揺るがします。
特に、糖尿病のように日々の管理が欠かせない病気をお持ちの方にとって、その不安は計り知れません。
紛争などの人道危機では、医療システムの崩壊によって、普段なら管理可能なはずの慢性疾患が、命を脅かす緊急事態へと変貌してしまうことが報告されています。
これは、災害時においても決して他人事ではありません。
大規模な混乱の中では、いつも頼りにしているかかりつけ医との連携が一時的に途絶えてしまう可能性も十分に考えられます。
だからこそ、あなた一人で全てを抱える必要はありません。
いざという時に大切な治療を続けていくために、事前にご家族と防災計画を共有し、「チーム」として乗り越える準備を一緒に始めましょう。

救助者に一目で伝える「糖尿病ヘルプカード」の作り方と携帯方法
もし災害時に怪我をしたり、重い低血糖で意識がもうろうとしたりした場合、ご自身で病状を伝えることは困難になります。
外見からは糖尿病患者であることは分かりません。
そのため、救助してくれた方があなたの状態をすぐに理解できなければ、ブドウ糖の投与といった適切な初期対応が遅れてしまう危険性があります。
そこで命のお守りになるのが「糖尿病ヘルプカード」です。
このカードには、あなた自身の「医療カルテ」の要約として、以下の情報を簡潔にまとめておきましょう。
【糖尿病ヘルプカード:記載項目チェックリスト】
- 基本情報
- 氏名、生年月日、血液型、緊急連絡先(ご家族など)
- 病状について
- 糖尿病のタイプ(1型、2型など)
- 使用中の薬(インスリンの種類と単位数、飲み薬の名前)
- インスリンポンプやCGM(持続血糖測定器)使用の有無
- かかりつけ医療機関名と連絡先
- 緊急時のお願い
- 「意識がない時は、ブドウ糖や砂糖を含むジュースを口に入れてください」といった低血糖時の具体的な対処法
- その他
- アレルギーの有無など、命に関わる重要な情報
カードは、自治体や日本糖尿病協会で配布されているもののほか、ご自身で作成したものでも構いません。
大切なのは、財布やスマートフォンのケース、キーホルダーなど、常に身につけている複数の物に入れておく「分散携帯」です。
災害用ポーチにも忘れずに入れておきましょう。
家族があなたのためにできること 低血糖時の対応と代理での薬の受取方法
ご家族のサポートは、災害時の困難な状況を乗り切るための最も心強い支えとなります。
特に、命に直結する以下の2つのことについて、日頃から情報を共有し、いざという時の役割分担を決めておくことが大切です。
1. 低血糖時の対応を知ってもらう
低血糖は、迅速かつ的確な対応が求められます。ご家族にも、そのサインと対処法を正しく理解してもらいましょう。
- 低血糖のサイン(初期症状)
- 強い空腹感、冷や汗、手足のふるえ、動悸など
- 意識がある場合の対応
- すぐにブドウ糖(10g程度)や、ブドウ糖を含むジュース(150~200ml)を摂ってもらいます。
- 意識がない・朦朧としている場合の対応
- 無理に飲ませると窒息の危険があるため、すぐに救助を要請してください。
- 救急隊が到着するまでの応急処置として、砂糖やブドウ糖を水で少し溶き、清潔な指で歯ぐきに塗りつける方法も有効です。
2. 代理で薬を受け取れる準備をしておく
災害時は、ご本人が医療機関や薬局へ行けない状況も十分に考えられます。
世界各地の災害や紛争では、医薬品へのアクセスが断たれることが、治療継続の大きな壁となることが示されています。
お薬手帳や保険証の保管場所を家族と共有しておけば、代理で薬を受け取ってもらうことが可能です。
災害時には特例措置として、お薬手帳の情報をもとに処方箋なしで薬を受け取れる場合もあります。
ご家族が代理で動けるようにしておく準備は、まさに「命綱」となります。
子どもや高齢の糖尿病患者がいる家族が特に注意すべきポイント
災害は、お子さんやご高齢の方といった、よりケアを必要とする方々へ特に大きな影響を及ぼす傾向があります。
ご家族の中に該当する方がいらっしゃる場合は、特にきめ細やかな配慮が求められます。
お子さんの場合
- 症状を言葉で伝えにくい
- 低血糖などの体調変化をうまく表現できないことがあります。「いつもと様子が違う」と感じたら、こまめに声をかけ、可能であれば血糖値を確認しましょう。
- 環境の変化によるストレス
- 避難生活のストレスは、血糖値を上げるホルモンを分泌させ、血糖コントロールに影響を与えやすいです。安心できる環境づくりを心がけてあげてください。
- 周囲への情報共有
- 避難所などでは、運営スタッフなど周囲の大人に病気のことを伝え、理解と協力を求めることが大切です。
ご高齢の方の場合
- 低血糖に気づきにくい(低血糖無自覚)
- 加齢とともに、低血糖の典型的な症状(冷や汗や動悸など)が現れにくくなることがあります。認知症の症状と間違われることもあるため、特に注意が必要です。
- 脱水のリスク
- 水分摂取が不足しがちで、血液が濃縮されて高血糖を招きやすい傾向があります。こまめな水分補給を促しましょう。
- 薬の管理
- 複数の薬を服用していることも多く(ポリファーマシー)、災害の混乱の中で飲み忘れや間違いが起きやすくなります。ご家族のサポートが非常に重要です。
災害用伝言ダイヤルだけじゃない 家族の安否確認ルールを決めておこう
災害発生時、ご家族が離れ離れになることも想定しなければなりません。
通信網が混乱する中で、お互いの安否を確認する手段を事前に決めておくことは、精神的な安定につながり、その後の行動計画を立てる上で非常に重要です。
公的なサービスだけでなく、複数の方法を組み合わせて、ご家庭のルールを作っておきましょう。
| 確認方法の種類 | 具体的な使い方・ルール(例) |
|---|---|
| 公的サービス | ・災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板(web171)で安否を登録・確認するキーとなる電話番号を決めておく。 |
| 日常ツール | ・LINEやX(旧Twitter)などのSNSで、安否情報を発信するグループや共通のハッシュタグを決めておく。 |
| アナログな方法 | ・自宅の玄関や避難所の掲示板など、目立つ場所に「〇〇(避難場所)にいます。無事です」と書いた紙を貼る。 |
| 中継点 | ・被災地外に住む親戚や知人を連絡の中継点(ハブ)と決め、まずはそこに連絡がつくようにする。 |
「まずはLINEグループで連絡。つながらなければ災害用伝言板を確認する」「最終的な集合場所は〇〇小学校の体育館」など、具体的なルールを平時に家族会議で話し合っておくことで、万が一の時にも、チームとして落ち着いて行動できます。
まとめ
災害はいつ、どこで起こるかわかりませんが、事前の「備え」があれば、いざという時の不安を大きく減らすことができます。
この記事を読み終えた今、ぜひ防災への第一歩を踏み出してみませんか。
まずは、ご自身の治療に必要な薬や物品をリストアップし、「災害用・緊急ポーチ」を作るところから始めましょう。
そして、低血糖が起きた時の対応や、薬の保管場所、緊急時の連絡方法など、大切な情報をぜひご家族と共有し、「チーム防災」の計画を立ててみてください。
日頃からの小さな備えと家族との連携が、万が一の時にあなたと大切な人の命と健康を守る、何より心強いお守りになります。
一人で抱え込まず、みんなで協力して災害に備えましょう。
参考文献
- Beran D, Aebischer Perone S, Castellsague Perolini M, Chappuis F, Chopard P, Haller DM, Jacquerioz Bausch F, Maisonneuve H, Perone N and Gastaldi G. “Beyond the virus: Ensuring continuity of care for people with diabetes during COVID-19.” Primary care diabetes 15, no. 1 (2021): 16-17.
- Katchhi MS and Ming LC. “Continuity of Chronic Disease Care in Gaza: a Commentary on Health System Collapse and Humanitarian Imperatives.” Journal of epidemiology and global health 15, no. 1 (2025): 137.
- Thompson BM and Cook CB. “Unsafe Sharps Disposal Among Insulin-Using Patients With Diabetes Mellitus: An Emerging Global Crisis.” Journal of diabetes science and technology 16, no. 6 (2022): 1376-1380.
- Factors influencing the effective management of diabetes during humanitarian crises in low- and middle-income countries: a systematic review.
