糖尿病の人は「がん」になりやすいのか?統計データから見るリスクと、定期的ながん検診の重要性を専門医が解説!
日々の血糖コントロール、本当におつかれさまです。治療を続ける中で、「糖尿病だと、がんになりやすいのでは?」という漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。実は、その不安は統計データによって裏付けられています。国内の大規模な調査では、糖尿病患者のがん発症リスクは、糖尿病でない人と比べて約1.2倍になることが報告されているのです。
しかし、必要以上に恐れることはありません。大切なのは、ご自身の正確なリスクを把握し、正しい知識を持って対策を講じることです。この記事では、なぜ糖尿病ががんのリスクを高めるのか、その医学的なメカニズムから、リスクを減らすために今日からできる具体的なアクションまで、信頼できるデータをもとに専門医が徹底解説します。ご自身の健康を守るための第一歩として、ぜひお読みください。
統計データで見る糖尿病とがんの密接な関係
日々の血糖コントロール、本当におつかれさまです。糖尿病の治療を続ける中で、「糖尿病だと、がんになりやすいと聞いたけれど本当だろうか?」と、ご不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実は、糖尿病とがんには密接な関係があることが、さまざまな研究から明らかになっています。しかし、必要以上に怖がることはありません。まずは正しい知識を持ち、ご自身の体の状態を正確に理解することが大切です。
ここでは信頼できる統計データをもとに、糖尿病とがんの関係性を分かりやすく解説していきます。ご自身の健康を守るための第一歩として、一緒に見ていきましょう。

糖尿病患者のがん発症リスクは健常者の約1.2倍
国内外の多くの研究によって、糖尿病の方はそうでない方と比べ、がんを発症するリスクが高いことが示されています。
日本国内で行われた複数の大規模な研究を統合して分析した結果では、糖尿病患者さんのがん発症リスクは、糖尿病でない方の約1.2倍になることが報告されています。
また、日本人の死因に目を向けると、糖尿病患者さんの約4割が悪性新生物、つまり「がん」で亡くなっているというデータがあります。これは、糖尿病でない方のがんによる死亡率(約3割)と比較して、明らかに高い割合です。
この「1.2倍」という数字を重く受け止める方もいらっしゃるかもしれませんが、これはあくまで統計上のリスクです。大切なのは、ご自身のリスクを正しく認識し、適切な対策を講じることです。リスクを知ることは、がんの早期発見や予防に向けた重要な一歩となります。
特にリスクが高いがん種トップ3【大腸がん・肝臓がん・膵臓がん】
糖尿病があると、全てのがんのリスクが一様に上がるわけではありません。特に発症しやすくなるがんの種類があることが分かっています。
日本人を対象とした研究では、特に以下の3つのがんのリスクが高まると報告されています。
| がんの種類 | リスクの上昇率(糖尿病でない方との比較) |
|---|---|
| 肝臓がん | 男性: 2.24倍 女性: 1.94倍 |
| 膵臓がん | 男性: 1.85倍 |
| 大腸がん | 男性: 1.36倍 |
表を見ていただくと分かるように、特に肝臓がん、膵臓がん、大腸がんのリスクが大きく上昇します。このほかにも、女性では胃がん(1.61倍)、乳がん(1.20倍)、子宮体がん(2.10倍)などのリスク上昇も指摘されています。
これらの臓器は、食事から得た栄養を処理したり、血糖値を調節するホルモンと深く関わったりする場所です。そのため、糖尿病による体内のさまざまな変化の影響を受けやすいと考えられています。
なぜ糖尿病だとがんになりやすいのか?4つの医学的メカニズムを解説
「どうして糖尿病だとがんになりやすいの?」と疑問に思いますよね。その背景には、糖尿病特有の体の中の変化が複雑に関わっています。主に、以下の4つのメカニズムが考えられています。
-
高インスリン血症
2型糖尿病では、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」という状態が起きています。すると体は血糖値を下げようとインスリンを過剰に分泌し、血液中のインスリン濃度が高い状態(高インスリン血症)になります。インスリンには細胞の増殖を促す働きもあるため、この状態ががん細胞の成長を助長してしまう可能性があるのです。
-
高血糖
血糖値が高い状態が続くと、体内で「酸化ストレス」という、細胞を傷つける物質が増加します。この酸化ストレスが、細胞の設計図であるDNAを傷つけてしまうことがあります。DNAが傷つくことで、細胞ががん化するきっかけになると考えられています。
-
慢性炎症
糖尿病の方は、体内で常に弱い炎症がくすぶっているような「慢性炎症」の状態にあることが分かっています。この絶え間ない炎症が、細胞の変異やがんの進行に関与すると考えられています。近年の研究では、食事や腸内環境が体の免疫や炎症状態に影響を及ぼすことも指摘されており、生活習慣全体で体を整えることの重要性が示唆されています。
-
肥満
特に2型糖尿病の方に多い肥満は、それ自体ががんの独立したリスク因子です。脂肪細胞からは、炎症を引き起こしたり、がん細胞の増殖を促したりする物質が分泌されます。最新の研究でも、肥満が2型糖尿病の大きな要因であることが改めて示されており、適正体重を維持することは、糖尿病とがんの両方の対策として非常に重要です。
あなたのリスクは?セルフチェックで確認する危険因子
糖尿病とがんには、実は共通の危険因子がいくつもあります。ご自身の生活習慣を振り返り、リスクがどのくらいあるかを確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、より注意が必要かもしれません。
【糖尿病とがんに共通する危険因子チェックリスト】
- □ 肥満気味である(BMIが25以上)
- BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
- □ 運動不足を感じている
- 週に150分以上の中等度の運動(早歩きなど)ができていない。
- □ 野菜や果物をあまり食べない
- □ 肉類(特に赤身肉や加工肉)や脂肪分の多い食事が好き
- □ 喫煙習慣がある
- 過去に吸っていた方も含みます。
- □ お酒をよく飲む
- 1日あたりの目安:日本酒1合、ビール中瓶1本、ワイングラス2杯以上。
- □ 家族に糖尿病やがんになった人がいる
いかがでしたか?これらの危険因子は、日々の生活習慣を見直すことで改善できるものがほとんどです。
このチェックリストは、ご自身を責めるためのものではありません。これから何ができるかを見つけ、対策を始めるためのきっかけです。一つでも改善できることから、私たちと一緒に取り組んでいきましょう。
糖尿病治療が「がんリスク」に与える影響と最新の知見
糖尿病の治療を続けていると、「このお薬は、がんのリスクに影響しないだろうか?」とご不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。毎日服用したり、注射したりするお薬だからこそ、気になるのは当然のことです。
糖尿病の治療薬とがんのリスクについては、世界中でさまざまな研究が行われています。お薬の種類によっては、がんのリスクに何らかの影響を与える可能性が指摘されているものもありますが、自己判断で治療を中断してしまうことが最も危険です。
ここでは、現在使われている主なお薬とがんリスクとの関係について、最新の研究結果も交えながら、専門医の視点で分かりやすく解説していきます。

インスリン治療はがんリスクを上げる?知っておくべきこと
「インスリン注射を始めると、がんになりやすくなるのでは?」というご心配の声を時々お聞きします。
結論からお伝えすると、インスリン治療そのものが、がんの発症リスクを直接的に高めるという明確な証拠はありません。現在の多くの研究で、その関連は否定的とされていますので、ご安心ください。
この疑問が生まれた背景には、「高インスリン血症」という状態が関係しています。
これは、インスリンの効きが悪くなった体(インスリン抵抗性)が、血糖値を下げようと膵臓に無理をさせてインスリンを過剰に分泌している状態です。この「体内で作られすぎたインスリン」が、がん細胞の増殖を促す可能性があると考えられています。
しかし、インスリン治療は、不足しているインスリンを体外から適切に補うものです。高インスリン血症とは状況が異なります。むしろ、インスリン治療によって血糖コントロールを良好に保つことの方が、がんのリスクを抑える上でずっと重要です。
また、糖尿病治療は日々進歩しています。インスリンと併用されることがあるアミリン製剤のような新しいお薬の研究も進んでいます。こうしたお薬は、体内の血圧を調節するシステムにどう影響するかなども詳しく研究されており、がんだけでなく心臓や腎臓など全身への影響を総合的に考えて、一人ひとりに最適な治療法が選択される時代になっています。
メトホルミンに期待されるがん予防効果とその根拠
糖尿病治療薬のなかで、逆にお薬を服用することで「がんの予防効果が期待できるのではないか」と注目されているものがあります。それが、2型糖尿病の治療で広く使われている「メトホルミン」というお薬です。
多くの研究から、メトホルミンを服用している糖尿病患者さんでは、服用していない人と比べて、特定のがんの発症リスクが低下する可能性が報告されています。その詳しい仕組みはまだ研究途中ですが、主に以下の2つの理由が考えられています。
- AMPキナーゼの活性化
AMPキナーゼとは、私たちの細胞の中にある「エネルギーセンサー」のようなものです。細胞のエネルギーが不足するとスイッチが入り、無駄なエネルギー消費や細胞の増殖にブレーキをかけます。メトホルミンはこのスイッチを活性化させ、がん細胞の成長を抑制することに繋がると考えられています。 - インスリン抵抗性の改善
メトホルミンは、インスリンの効きを良くする(つまり、インスリン抵抗性を改善する)作用があります。これにより、がんの成長を促す可能性のある高インスリン血症が改善され、間接的にがんのリスクを低減させる効果が期待できます。
ただし、これはあくまで糖尿病治療の副次的な効果であり、がん予防のためだけにメトホルミンを服用することはありません。主治医の指示に従って正しく服用することが大切です。
良好な血糖コントロール(HbA1c 7.0%未満)でがんリスクはどれだけ下がるのか
糖尿病治療薬の種類についてお話ししてきましたが、がんのリスクを減らす上で最も大切なのは、「お薬の種類」以上に「血糖コントロールの質」です。つまり、日々の血糖値を安定させることが、がん予防の基本となります。
その目標となる指標が、過去1〜2ヶ月の血糖値の平均を反映する「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」です。糖尿病の合併症を防ぐための一般的な目標値は「7.0%未満」ですが、これはがん予防の観点からも非常に重要な目標です。
良好な血糖コントロールががんリスクを下げる理由は、主に2つあります。
- 高血糖による細胞へのダメージを防ぐ
慢性的な高血糖は、細胞の設計図であるDNAを傷つけたり、「酸化ストレス」という体がサビつくような状態を引き起こしたりして、がんの発生に繋がります。 - 細胞のエネルギー工場を守る
最新の研究では、血糖値が高い状態が、細胞のエネルギー工場である「ミトコンドリア」を傷つけることが分かってきました。このミトコンドリアの機能不全は、糖尿病性腎臓病などの合併症だけでなく、がんの発生にも深く関わると考えられています。
血糖値を安定させることは、全身の細胞一つひとつを健康に保ち、がんという病気が発生しにくい体内環境をつくることに直結するのです。
主治医にがんのリスクや検診について相談する際のポイント
ご自身の体について、がんのリスクや検診のことを主治医に尋ねるのは、少し勇気がいることかもしれません。しかし、私たちは糖尿病の治療だけでなく、皆さんが健やかに毎日を送るためのパートナーです。がんに関する不安も、ぜひ私たちに共有してください。
診察の際に、スムーズにご相談いただくためのポイントをいくつかご紹介します。
| 準備しておくと良いこと | 質問の具体例 |
|---|---|
| ご自身の情報を整理しておく ・家族のがんの既往歴 ・気になる自覚症状(体重減少など) ・喫煙や飲酒の習慣 |
「家族に大腸がんの人がいるのですが、私のリスクはどうでしょうか?」 「最近、食事は変わらないのに体重が減ってきたのが気になります」 |
| 聞きたいことをメモしておく | 「私の場合、特に気をつけた方が良いがんはありますか?」 「どの検診を、いつ頃受けるのがおすすめですか?」 |
| 検診への希望を具体的に伝える | 「市の胃がん検診を受けたいのですが、どうすれば良いですか?」 「人間ドックで、追加した方が良い検査項目はありますか?」 |
私たち医師も、日々の診療で血糖コントロールが急に悪化したり、理由なく体重が減少したりした際には、がんの可能性を念頭に置いています。どんな些細なことでも構いませんので、気になることは遠慮なくご相談ください。一緒に最適な対策を考えていきましょう。
糖尿病専門医が推奨する「がん早期発見」のための具体的なアクションプラン
糖尿病とがんの関係を知り、ご自身の体のことを心配に思われているかもしれません。しかし、不安な気持ちのままでいるのではなく、正しい知識を持って具体的な行動を起こすことが、未来の健康を守る何よりの鍵となります。
糖尿病だからといって、必ずがんになるわけではありません。大切なのは、ご自身のリスクを正しく理解し、定期的な「がん検診」と「生活習慣の改善」という2つの柱で、がんの早期発見と予防に努めることです。
ここからは、専門医の視点から、今日から始められる具体的な行動計画を一緒に見ていきましょう。

糖尿病患者さんに推奨されるがん検診【種類・頻度・年齢別推奨リスト】
糖尿病をお持ちの方は、そうでない方と比べて一部のがんのリスクが高まるため、定期的ながん検診の受診が特に重要になります。
国が推奨するがん検診に加えて、糖尿病との関連が深いがんについても意識を向けておくことが大切です。ご自身の年齢や性別に応じて、どの検診を受けたらよいか、以下のリストで確認してみましょう。
| がんの種類 | 推奨される検査 | 対象となる方の目安 | 受診の頻度の目安 | 特に糖尿病患者さんに重要な理由 |
|---|---|---|---|---|
| 大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 毎年 | 高インスリン血症がリスクを高めるため、毎年のチェックが推奨されます。 |
| 肝臓がん | 腹部超音波検査 血液検査 |
肝炎ウイルス陽性の方 脂肪肝を指摘されている方 |
医師と相談 | 糖尿病の方は脂肪肝を合併しやすく、肝臓がんのリスクが高まります。 |
| 膵臓がん | 腹部超音波検査など | 急な血糖悪化や 原因不明の体重減少がある方 |
医師と相談 | 血糖値をコントロールする臓器であり、異常が見過ごされやすいため注意が必要です。 |
| 胃がん | 胃部X線検査 または胃内視鏡検査 |
50歳以上 | 2年に1回 | |
| 肺がん | 胸部X線検査 喀痰細胞診 |
40歳以上 | 毎年 | 喫煙習慣のある方は特に重要です。 |
| 乳がん | マンモグラフィ | 40歳以上の女性 | 2年に1回 | 肥満との関連が指摘されています。 |
| 子宮頸がん | 子宮頸部細胞診 | 20歳以上の女性 | 2年に1回 |
特に、理由がないのに急に血糖コントロールが悪化した場合や、食事量は変わらないのに体重が減少してきた場合は、膵臓がんなどのサインかもしれません。気になる症状があれば、次の診察を待たずに、いつでも私たちにご相談ください。
今すぐ始められるがん予防のための生活習慣改善5選【食事・運動】
がんを予防するための生活習慣は、実は日々の糖尿病治療と多くの点で共通しています。血糖コントロールを良好に保つことは、がんのリスクを減らすことにも直結するのです。
特別なことを始める必要はありません。まずは以下の5つのポイントを意識してみましょう。
-
野菜・きのこ・海藻類を食事の主役に
食物繊維が豊富なこれらの食材は、食後の血糖値の急上昇を穏やかにしてくれます。一方で、赤身肉(牛肉や豚肉)や加工肉(ハム、ソーセージ)の摂りすぎは、大腸がんのリスクを高める可能性が指摘されています。食べる量や頻度を少し減らす工夫をしてみましょう。
-
「あと10分」から始める運動習慣
ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分行うのが目標です。まずは今の生活に「プラス10分」体を動かす時間を作ってみませんか。運動は、私たちの体のエネルギー工場である「ミトコンドリア」の働きを活発にします。近年の研究では、このミトコンドリアの機能低下が、糖尿病の合併症だけでなく、がんの発生にも関わると考えられています。運動で細胞レベルから体を元気にすることが、がん予防にもつながるのです。
-
ご自身の適正体重を知り、維持する
肥満、特に内臓脂肪の増加は、インスリンの働きを悪くする(インスリン抵抗性)だけでなく、がん細胞の増殖を促す炎症の原因にもなります。ご自身の身長にあった適正体重を知り、維持することを目標にしましょう。
-
禁煙にチャレンジする
喫煙は、肺がんをはじめ多くのがんの確実なリスク要因です。ご自身の意思だけで禁煙するのが難しい場合は、禁煙外来で専門家のサポートを受けることもできます。当院でもサポートしていますので、お気軽にご相談ください。
-
お酒は「楽しむ」程度に
過度な飲酒は、肝臓がんや大腸がんのリスクを高めます。もし飲む場合は、1日のアルコール量で20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合が目安)に留め、休肝日を設けるようにしましょう。
自治体の助成制度を賢く活用するがん検診の費用と予約方法
「がん検診が大切なのはわかっているけれど、費用が心配」と感じる方も少なくないでしょう。しかし、お住まいの市区町村が実施している検診制度を利用すれば、費用負担を大きく軽減できます。
■自治体のがん検診制度とは?
多くの自治体では、住民を対象に、無料または一部自己負担(数百円〜数千円程度)でがん検診を実施しています。対象となるがんの種類は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんが一般的です。
■予約から受診までの流れ
-
案内が届く
対象年齢になると、自治体から検診の案内通知(受診券やクーポン券など)が郵送されます。
-
受診方法を選ぶ
保健センターなどで一斉に行う「集団検診」と、地域の医療機関で個別に受ける「個別検診」があります。
-
予約する
案内に従って電話やウェブで予約します。当院のようなクリニックで個別検診を受けられる場合もあります。
-
受診
予約日時に、受診券と健康保険証などを持って受診します。
手続きが少し面倒に感じられるかもしれませんが、ご自身の健康を守るための大切な機会です。詳しい申込方法は、「お住まいの市区町村名 がん検診」で検索するか、自治体のウェブサイトで確認できます。ぜひ、この制度を賢く活用してください。
もしがんが見つかったら?糖尿病とがん治療を両立させるために知っておくべきこと
万が一、がんが見つかった場合、その衝撃や不安は計り知れないものだと思います。さらに糖尿病の治療も続くと、「これからどうなってしまうのだろう」と心細く感じられるかもしれません。
しかし、最も大切なのは一人で抱え込まないことです。糖尿病とがんの治療は、専門家が連携することで、適切に両立させることが可能です。
■チームで支える治療
がんの治療を行う際は、がんの主治医と、私たち糖尿病の主治医が情報を共有し、連携する「チーム医療」で患者さんを支えます。
-
血糖値への影響と対策
手術や抗がん剤、ステロイド薬などの治療は、血糖値を大きく変動させることがあります。治療計画に合わせてインスリンの量を細かく調整するなど、専門的な血糖管理を行います。
-
感染症の予防
がん治療中は免疫力が低下しやすいため、良好な血糖コントロールを保つことが、感染症のリスクを減らし、治療をスムーズに進める上で非常に重要になります。
また、病と向き合うのは患者さんご本人だけではありません。ある研究では、がん患者さんを支えるご家族もまた、大きな精神的負担を抱えやすいことが報告されています。患者さんご自身はもちろん、ご家族も辛いときには医療スタッフや相談窓口などを頼ってください。私たちは、患者さんとご家族をチームの一員として、一緒に支えていきたいと考えています。
まとめ
今回は、糖尿病とがんの密接な関係について、統計データをもとに詳しく解説しました。
糖尿病の方は、そうでない方と比べてがんの発症リスクが少し高くなるのは事実です。特に大腸がんや肝臓がん、膵臓がんには注意が必要です。しかし、その数字に過度に不安になる必要はありません。
最も大切なのは、日々の血糖コントロールを良好に保つこと、そして定期的にがん検診を受けること。この2つが、ご自身の未来の健康を守るための最も有効な対策です。普段から取り組んでいる食事療法や運動療法は、血糖値を安定させるだけでなく、がんの予防にも直接つながっています。
まずは、ご自身の体を正しく知るために、主治医にがん検診について相談することから始めてみませんか。一人で抱え込まず、私たち専門家と一緒に、これからの健康を守っていきましょう。
参考文献
- Horn DB, Ryan DH, Kis SG, Alves B, Mu Y, Kim SG, Aberle J, Bain SC, Allen S, Sarker E, Wu Q, Stefanski A, Jouravskaya I and ATTAIN-2 Trial Investigators. “Orforglipron, an oral small-molecule GLP-1 receptor agonist, for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (ATTAIN-2): a phase 3, double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled trial.” Lancet (London, England) 406, no. 10522 (2026): 2927-2944.
- Girdhar K, Dedrick S, Rhodes L, Kim D, Powis A, Mahon C, Chapdelaine H, Obaid L, McNamara M and Altindis E. “Diet, gut microbiome, and type 1 diabetes: from risk to translational opportunity.” Gut microbes 18, no. 1 (2026): 2614039.
- Zhu XY, Hu LY, Jin MY and Tung TH. “Suicidality risk of cancer caregivers: a systematic review and meta-analysis of observational studies.” Annals of medicine 58, no. 1 (2026): 2624214.
- Luo J, Lu F, Cuciureanu M, Xu X, Dong H and Gong M. “Targeting mitochondrial quality control in diabetic kidney disease: emerging therapeutic opportunities.” Renal failure 48, no. 1 (2026): 2620218.
- Muskiet MHA, Nardone M, Rensen PCN, Cherney DZI and Cooper ME. “Amylin and the renin-angiotensin system: risk or opportunity in amylin-based therapy?” Lancet (London, England) 406, no. 10522 (2026): 2980-2983.
