糖尿病の方の年末年始の過ごし方について
ご馳走が並ぶ年末年始。「お餅は何個まで?」「周りに気を遣わせてしまう…」そんな不安から、楽しいはずの時間がストレスになっていませんか?実はそのストレスこそ、血糖値を上げるホルモンを分泌させ、コントロールを乱す一因になりかねません。しかし、ご安心ください。糖尿病だからと、食事の楽しみをすべて諦める必要は全くないのです。
大切なのは「制限」ではなく「賢い選択」。少しの考え方の転換と食べる順番などの簡単なコツで、血糖値を安定させながら特別な食事を満喫することは十分に可能です。この記事では専門医の立場から、おせち料理の選び方からお酒の席での具体的な対処法まで、安心して年末年始を乗り切るための実践術を詳しく解説します。
年末年始、糖尿病だからと諦めない!食事を楽しむための心構え
年末年始は、ご家族や親しい方々と食卓を囲む機会が増える特別な時期です。 しかし、糖尿病の治療に取り組む方にとっては、不安を感じやすい季節かもしれません。
おせち料理やお雑煮など、普段とは違う糖質や脂質の多い食事が続きます。 「ご馳走を前にして我慢ばかりではつらい」 「周りに気を遣わせてしまうのが申し訳ない」 このように感じ、ストレスを抱えてしまう方も少なくないでしょう。
しかし、糖尿病だからといって、食事の楽しみをすべて諦める必要は全くありません。 いくつかの心構えと工夫で、血糖値を安定させながら食事を楽しむことは可能です。 この時期を乗り切るための「考え方」と「具体的なコツ」を専門医の立場から解説します。

「制限」ではなく「選択」へ。考え方を変える第一歩
糖尿病の食事療法で最も大切なのは、考え方を少し変えてみることです。 「あれもダメ、これもダメ」という我慢を強いる「制限」の発想。 これを、「何を選び、どう食べるか」という主体的な「選択」の発想へ切り替えましょう。
考え方を少し変えるだけで、食事に対するストレスは大きく減ります。 そして、前向きに血糖コントロールに取り組めるようになります。 「自分で健康のために選んでいる」という意識が、治療を続ける上で大きな力になるのです。
食事を「選択」するための具体的な4ステップ
ご馳走を前にしたら、まず冷静に以下のステップを試してみてください。
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ステップ1:食卓全体を見渡す
まずは料理全体を見て、糖質が多いもの(ごはん、餅、栗きんとん、伊達巻など)と、 食物繊維が多いもの(野菜の煮物、酢の物、きのこ料理など)を把握します。
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ステップ2:食べたいものに優先順位をつける
「これはどうしても食べたい」という料理を1〜2品決めましょう。 すべてを我慢するのではなく、本当に食べたいものをしっかり味わうことが満足感に繋がります。
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ステップ3:バランスを考えて組み合わせる
糖質の多い料理を選ぶなら、ごはんの量をいつもの半分にする。 お餅を食べるなら、野菜がたっぷり入った汁物と一緒に食べる。 このように、食事全体でバランスを取る「選択」を意識します。
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ステップ4:1日単位でカロリーや糖質を調整する
もしある食事で食べ過ぎてしまっても、自分を責めないでください。 夕食がご馳走なら、朝食や昼食は軽めにするなど、1日や数日の単位で調整すれば大丈夫です。
周囲に気を遣わせないためのスマートな伝え方と会話術
親戚や友人との集まりで、ご自身の病気についてどう伝えればよいか悩むかもしれません。 場の雰囲気を壊さず、自分のペースで食事を楽しむためには、上手な伝え方が大切です。 大切なのは、深刻になりすぎず、前向きかつ簡潔に伝えることです。
【場面別】スマートな伝え方・会話術の具体例
| 場面 | おすすめの伝え方 |
|---|---|
| 事前に伝える場合 (家族や親しい友人へ) |
「年末年始のご馳走、楽しみだね!今、食事で体調を整えているから、もしよかったら野菜料理を少し多めに作ってもらえると嬉しいな」 「いつもありがとう。お餅は1個だけいただくね」 |
| 食事を強く勧められた場合 | 感謝を伝えてから断る 「ありがとうございます、とても美味しそうですね!でも今お腹がいっぱいなので、お気持ちだけいただきますね」 代替案を出す 「そちらも美味しそう!今はこのお刺身をいただいているので、後でいただきますね」 |
| なぜ食べないのか聞かれた場合 | 「今、食事療法を頑張っていて、おかげさまでとても調子が良いんです。自分で食べるものを選んでコントロールしているんですよ」 このように、感謝やポジティブな言葉を添えることで、相手に不快感を与えずにご自身の状況を理解してもらいやすくなります。 |
医師が教える、ご馳走を前にした時のストレス対処法
目の前にご馳走が並ぶと、「食べたい」気持ちと「食べてはいけない」気持ちがぶつかります。 この葛藤は大きなストレスとなり、血糖コントロールに悪影響を及ぼすことがあります。 実は、ストレスを感じると血糖値を上げるホルモンが分泌されやすくなるのです。 ストレスを上手に乗り切ることは、血糖管理そのものと言えます。
ご馳走ストレスを乗り切るためのチェックリスト
- 食べる前にできること
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深呼吸をする
食事の前に、ゆっくりと5秒かけて息を吸い、10秒かけて吐く深呼吸を数回繰り返します。 気持ちが落ち着き、冷静な判断がしやすくなります。
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まず水分を摂る
食事の前に、お茶や水を一杯飲むことで空腹感が和らぎ、早食いや食べ過ぎを防ぐ助けになります。
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食べる量をあらかじめ決める
大皿から直接取るのではなく、「このお皿に盛った分だけ」と決めてから席に着きましょう。 だらだらと食べ続けるのを防ぐ効果があります。
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- 食べている最中にできること
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よく噛んで味わう
一口ごとに30回程度よく噛むことを意識しましょう。 満腹感を得やすくなるだけでなく、少量でも満足度が高まります。
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会話を楽しむことに集中する
食事そのものだけでなく、家族や友人との会話を楽しみましょう。 「食べること」から意識をそらすことで、過度な食欲を抑えられます。
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- もし食べ過ぎてしまったら
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自分を責めない
年末年始は特別な期間です。少し食べ過ぎても「やってしまった」と過度に自分を責めないでください。 罪悪感はさらなるストレスの原因になります。
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軽い運動を取り入れる
食後に15分程度の散歩をするなど、少し体を動かしましょう。 血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待でき、気分転換にもなります。
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【実践編】おせち・お雑煮・ご馳走を賢く食べる順番と工夫
年末年始の特別な食事は、血糖値を急上昇させる「血糖値スパイク」を招きやすい状況です。 食後の急激な血糖値の上昇と下降は、血管にダメージを与え、糖尿病の合併症を進める一因となります。
しかし、食べる順番や料理の選び方を少し工夫するだけで、血糖値スパイクは防げます。 これからお伝えする具体的な方法を実践し、安心して celebratory meal を楽しみましょう。
糖質量でチェック!要注意おせち料理とおすすめおせち料理
伝統的なおせち料理は、日持ちさせるために砂糖やみりんを多く使う傾向があります。 まずは、どの料理に糖質が多く含まれているかを把握し、「選択」の精度を上げましょう。 下の表を参考に、食べる量や組み合わせを賢く選んでみてください。
| 分類 | 料理名 | 医師のワンポイント解説 |
|---|---|---|
| 特に注意 (糖質が非常に多い) |
栗きんとん 伊達巻 黒豆 田作り |
さつまいもや栗、砂糖、みりんが主材料のため、糖質の塊とも言えます。 これらは「デザート」と捉え、食事の最後に一口だけ味わう程度にしましょう。 |
| おすすめ (糖質が少ない) |
数の子 紅白なます たたきごぼう エビのうま煮 焼き魚(鯛、ぶり) 筑前煮 |
食物繊維やタンパク質が豊富な料理です。 数の子は塩分が多いので食べ過ぎに注意し、なますは手作りなら砂糖を控える工夫を。 筑前煮は根菜の糖質が気になりますが、きのこやこんにゃくを意識して食べると食物繊維を補給できます。 |
手作りされる場合は、砂糖の代わりに血糖値に影響しない甘味料(エリスリトールなど)を使ったり、昆布や鰹節で出汁の旨味をしっかり効かせて薄味にしたりする工夫も有効です。
お餅は1日何個まで?お雑煮の血糖値を上げにくくする食べ合わせ
お正月に欠かせないお餅ですが、血糖値を急激に上げやすい食品の代表格です。 市販の切り餅1個(約50g)には約25gの糖質が含まれます。 これは、ご飯お茶碗に軽く半分(約100g)の糖質量とほぼ同じです。
食べる量としては、1回の食事で1個、1日に合計2個までを目安にしましょう。 ただし、これはあくまで一般的な目安です。 ご自身の血糖コントロールの状態に合わせて調整し、不安な場合は主治医にご相談ください。
お雑煮にする際は、具材の工夫で血糖値の上昇をさらに穏やかにできます。
【お雑煮の血糖値を上げにくくする工夫チェックリスト】
- 野菜・きのこ・海藻をたっぷり入れる 大根、人参、白菜、ほうれん草、しいたけ、わかめなどをたくさん加えましょう。 水溶性食物繊維が、糖の吸収をゆっくりにしてくれます。
- 鶏肉やかまぼこなどのタンパク質をプラスする タンパク質を一緒に摂ることで、消化が緩やかになり血糖値の急上昇を抑える助けになります。
- 汁物と具材から先にいただく 温かい汁物や具材を先に食べることで胃が落ち着き、満腹感を得やすくなります。 お餅の早食いや食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。
- お餅の種類を選ぶ もし可能であれば、白米の餅よりも食物繊維やミネラルが豊富な玄米餅や雑穀餅を選ぶと、より血糖値の上昇が緩やかになります。
「ベジファースト」だけじゃない!年末年始のご馳走攻略法3選
食事の最初に野菜を食べる「ベジ(野菜)ファースト」は、血糖コントロールの基本として広く知られています。 ご馳走が並ぶ年末年始には、さらに効果的な3つの攻略法を意識してみましょう。
攻略法1:「カーボラスト」で食べる順番を徹底する
「カーボ」とは炭水化物(Carbohydrate)のことです。 食事の最後に炭水化物を食べる「カーボラスト」を実践しましょう。 理想的な食べる順番は以下の通りです。
- 最初:野菜、きのこ、海藻類(食物繊維) 食物繊維が胃腸の中で壁のような役割を果たし、後から入ってくる糖の吸収を穏やかにします。
- 次に:肉、魚、卵、大豆製品(タンパク質・脂質) タンパク質や脂質は消化に時間がかかるため、満腹感を持続させ、食事全体の吸収スピードを緩やかにします。
- 最後:ごはん、お餅、いも類(炭水化物) 血糖値を直接上げる炭水化物を最後に食べることで、血糖値の急上昇を最も効果的に抑えられます。
攻略法2:「取り分け皿」で食べる量を”見える化”する
大皿から直接料理を取って食べると、自分がどれだけ食べたか把握しにくく、つい食べ過ぎてしまいます。 まずはご自身の取り分け皿に、食べる分だけを盛り付けましょう。
この時、「お皿の半分は野菜、4分の1は肉や魚、残りの4分の1はごはんや餅」というように、バランスを意識するのがポイントです。 食べる量を視覚的に把握することで、無意識の食べ過ぎを防ぎ、満足感も得やすくなります。
攻略法3:食後30分からの「ちょい足し運動」を習慣に
食後、血糖値が最も上がりやすいのは30分から1時間後です。 このタイミングで軽い運動を取り入れると、筋肉が血液中の糖をエネルギーとして消費してくれるため、食後高血糖の予防に非常に効果的です。
- 食器の片付けや洗い物を率先して行う
- テレビを見ながらCMの間にその場で足踏みをする
- 近所を10分程度、少し早足で散歩する
激しい運動は必要ありません。 「食後はすぐに横にならない」と意識するだけでも、血糖コントロールには良い影響があります。
忘年会・新年会も大丈夫!外食・お酒の席での血糖コントロール術
年末年始は、忘年会や新年会などお酒を伴う外食の機会が増える特別な時期です。 「お付き合いだから断れないけれど、血糖値が心配…」 「せっかくの場なのに、自分だけ我慢するのはつらい」 このように感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、いくつかの重要なポイントを押さえておけば、宴席を楽しみながら血糖コントロールを維持することは十分に可能です。 お酒の種類やメニューの選び方、そしてお薬との付き合い方について、糖尿病専門医の視点から具体的な方法を詳しく解説します。
ビール、日本酒、焼酎…アルコールの種類別・血糖値への影響と適量
お酒は種類によって糖質の量が異なり、血糖値への影響も大きく変わります。 まず最も大切なのは、ご自身の「適量」を知り、それを守ることです。
日本糖尿病学会では、1日に摂取してよいアルコールの量は、純アルコール換算で20g〜25g程度までを目安としています。 これは、肝臓への負担や血糖コントロールへの影響を考慮した量です。 お酒の種類ごとの特徴と適量の目安を、下の表で確認してみましょう。
| お酒の種類 | 分類 | 糖質の量 | 医師のワンポイント解説 | 1日の適量目安(純アルコール約20g) |
|---|---|---|---|---|
| ビール 日本酒 ワイン |
醸造酒 | 多い | 原料(麦、米、ブドウ)由来の糖質が含まれており、血糖値を直接上げやすいお酒です。 特に甘口の日本酒やワイン、黒ビールは糖質が多いため注意が必要です。 |
ビール:中びん1本(500mL) 日本酒:1合(180mL) ワイン:グラス2杯(約240mL) |
| 焼酎 ウイスキー ブランデー |
蒸留酒 | ほぼゼロ | 製造過程で糖質が取り除かれるため、血糖値を直接上げる心配は少ないです。 ただし、アルコール自体のカロリーは高く、飲み過ぎると後述する「低血糖」のリスクが高まります。 |
焼酎(25度):0.6合(約110mL) ウイスキー:ダブル1杯(60mL) |
| 梅酒 カクテル チューハイ |
混成酒 | 非常に多い | シロップや果汁で甘く味付けされており、糖質が非常に多い傾向があります。 「ジュース」に近いと認識し、できるだけ避けるのが賢明な選択です。 |
種類によるため、栄養成分表示の確認を推奨します。 |
お酒を選ぶ際は、糖質の少ない蒸留酒(焼酎、ウイスキーなど)を、水やお茶、無糖の炭酸水で割って飲むのがおすすめです。 どのお酒を飲む場合でも、間に同量のお水やお茶(チェイサー)を挟むように心がけましょう。 脱水を防ぎ、飲み過ぎの予防にも繋がります。
〆のラーメンは絶対NG?宴会で選びたいメニュー・避けたいメニュー
宴会でのメニュー選びは、血糖コントロールの重要な鍵を握ります。 「あれもこれもダメ」と我慢するのではなく、「何を選び、どう食べるか」という視点で賢く工夫してみましょう。
食べる順番は、これまでもお伝えしてきた「ベジファースト(野菜から)」、そして「カーボラスト(炭水化物は最後)」が基本です。
【メニュー選びのポイント】
-
積極的に選びたいメニュー(◎)
- 食物繊維が豊富なもの 海藻サラダ、きのこのソテー、野菜スティック、もずく酢、おひたしなど。 これらを最初に食べることで、後の糖の吸収を緩やかにします。
- 良質なタンパク質 刺身、焼き魚、焼き鳥(タレより塩)、豆腐料理(冷奴、湯豆腐)、枝豆など。 満腹感を得やすく、筋肉の材料にもなります。
- 鍋物 野菜や豆腐、魚介類が中心の寄せ鍋や水炊きは、栄養バランスも良くおすすめです。 ただし、シメの雑炊やうどんは糖質の塊なので、ぐっとこらえましょう。
-
できるだけ避けたいメニュー(×)
- 糖質と脂質の組み合わせ ポテトサラダ、春雨サラダ、揚げ物(唐揚げ、天ぷら)、ピザ、グラタンなど。 衣や芋類、小麦粉製品は血糖値を上げやすく、脂質も多いためカロリー過多になりがちです。
- 甘い味付けの料理 煮物、照り焼き、酢豚など。砂糖やみりんが多く使われており、血糖値が急上昇しやすくなります。
- 〆の一品 ラーメン、お茶漬け、雑炊、デザート。宴会の最後に出てくるこれらの料理は、アルコールで判断が鈍った体に追い打ちをかける高糖質・高脂質メニューです。 血糖値の急上昇だけでなく、中性脂肪として蓄積されやすいため、できる限り控えましょう。
お酒を飲む日のインスリン・薬の調整と低血糖への備え
お酒を飲む際に、高血糖と同じくらい、あるいはそれ以上に注意すべきなのが「低血糖」です。 特に、インスリン注射や一部の血糖降下薬(SU薬など)を使用している方は、命に関わることもあるため特に注意が必要です。
アルコールは肝臓で分解されますが、実は肝臓には血糖値を一定に保つために糖を作り出す「糖新生」という重要な働きがあります。 飲酒をすると、肝臓はアルコールの分解を最優先するため、この糖新生の働きがストップしてしまいます。 その結果、薬の効果と相まって血糖値が下がりすぎてしまい、重い低血糖を引き起こす危険があるのです。 この低血糖は、飲酒中だけでなく、飲酒後数時間経った夜間や翌朝に起こりやすいのが特徴です。
絶対に自己判断で薬の量を減らしたり、インスリンを中止したりしないでください。 お酒を飲む予定がある場合は、必ず事前に主治医に相談し、当日の食事内容や飲む量に応じた薬の調整について指示を受けてください。
【お酒を飲む日の低血糖対策チェックリスト】
- □ 空腹での飲酒は絶対に避ける 必ず食事と一緒に、ゆっくり飲むことを徹底しましょう。
- □ 低血糖時の補食を必ず携帯する ブドウ糖(10g程度)や、糖分を含むジュースなどを常に持ち歩きましょう。
- □ 周囲の人に伝えておく 可能であれば、一緒にいる家族や友人に、自分が糖尿病であることと、万が一意識が朦朧とした際の対応(ブドウ糖を摂らせる、救急車を呼ぶなど)を伝えておくと安心です。
- □ 血糖測定をこまめに行う 飲酒後、特に就寝前には必ず血糖値を測定しましょう。もし血糖値が低い場合は、補食をしてから休むようにしてください。
- □ 飲み過ぎた翌朝の車の運転は控える 翌朝に低血糖が起こる可能性も十分にあります。重大な事故を防ぐためにも、運転は避けましょう。
正しい知識を身につけて備えることで、リスクを管理しながら安全に楽しい年末年始をお過ごしください。
食べ過ぎ・運動不足をリセット!連休中の生活習慣マネジメント
年末年始は特別な食事や生活リズムの変化から、血糖コントロールが乱れやすい時期です。 つい食べ過ぎてしまったり、寒さから家にこもりがちで運動不足になったり。 そんな生活が数日続くと、食後の血糖値が上がりやすくなるだけでなく、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が進んでしまうことがあります。
しかし、「休み明けに頑張ればいい」と問題を先送りにするのは避けたいところです。 乱れた状態が続くと、元の安定した状態に戻すのにより多くの時間と努力が必要になります。 大切なのは、連休中に少しでも意識を向けて「大きな乱れを防ぐ」こと。 そして、もし乱れてしまっても早期に「リセット」するための知識を身につけておくことです。 ここでは、ご自宅で無理なく実践できる生活習慣の管理術を、専門医の視点から解説します。

テレビを見ながらでもOK!室内でできる「ながら血糖対策運動」
寒い時期に運動量を確保するのは簡単ではありません。 しかし、食後の運動は、血糖コントロールにおいて非常に有効な手段です。 食事によって血液中に入ってきたブドウ糖は、運動することで筋肉に取り込まれ、エネルギーとして消費されます。 これにより、食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)を効果的に抑えることができるのです。
特に運動の効果が高いのは、血糖値が上がり始める「食後30分~1時間」の時間帯です。 特別な運動時間を設けなくても、日常生活の中での「ながら運動」で十分な効果が期待できます。
【医師推奨】室内でできる「ながら運動」メニュー
| 運動メニュー | やり方とポイント | こんな時に |
|---|---|---|
| かかとの上げ下げ | 立った状態で、壁やイスに手をついて体を支えながら、かかとをゆっくり上げ下げします。 ふくらはぎの筋肉を意識するのがコツです。第二の心臓とも呼ばれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促進します。 |
歯磨き中 洗い物中 |
| イスを使ったスクワット | イスに浅く腰掛けた状態から、反動をつけずにゆっくり立ち上がり、またゆっくり座ります。 太ももの大きな筋肉を鍛えることで、糖の消費効率が上がります。膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。 |
テレビのCM中 休憩時間 |
| その場足踏み | 背筋を伸ばし、太ももをなるべく高く上げるように意識して、その場でリズミカルに足踏みをします。 腕を大きく振ると、肩甲骨周りもほぐれて全身運動になります。 |
テレビを見ながら 電話中 |
これらの運動を1回10~15分程度、無理のない範囲で続けてみましょう。 「少し息が弾むけれど、会話はできる」くらいの強度が目安です。 食後すぐに体を動かすことで、ご自身の体がどのように反応するのかを実感できる良い機会にもなります。
もしかしてシックデイ?年末年始に体調を崩した時の緊急対応
年末年始は多くの医療機関が休診になるため、この時期の体調不良は特に不安が大きいものです。 糖尿病の方が、発熱・下痢・嘔吐や食欲不振といった、糖尿病以外の病気にかかることを「シックデイ(Sick Day:病気の日)」と呼びます。
シックデイでは、体が病気と闘うためにストレスホルモン(コルチゾールやアドレナリンなど)を分泌します。 このホルモンは血糖値を上げる働きがあるため、食事をあまり摂れていなくても、血糖値が著しく高くなることがあります。 一方で、食事が摂れないために低血糖に陥る危険性もあり、血糖コントロールが非常に不安定になる、注意すべき状態です。
【シックデイの基本対応】知っておきたい4つのルール
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自己判断で薬を中断しない インスリンや血糖降下薬は、自己判断で絶対にやめないでください。 特にインスリン注射を中断すると、「糖尿病ケトアシドーシス」という命に関わる危険な状態に陥ることがあります。 食事の量に応じた薬の調整方法は、必ず事前に主治医に確認しておきましょう。
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水分と糖質(炭水化物)の補給を最優先に 脱水は高血糖を悪化させる大きな要因です。 経口補水液やスポーツドリンク、野菜スープなどで、水分と電解質をこまめに補給してください。 食事が難しい場合は、おかゆ、うどん、ゼリー飲料、アイスクリームなど、消化しやすく吸収されやすい糖質を少量ずつ摂りましょう。
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血糖値と体調をこまめにチェック 血糖値は不安定になりやすいため、3~4時間おきなど、いつもより頻繁に測定し記録しましょう。 また、1型糖尿病の方やインスリン治療中の方は、血中または尿中のケトン体も測定することが重要です。
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すぐに医療機関へ連絡すべき危険なサイン 以下の症状が見られる場合は、ためらわずに、かかりつけ医の緊急連絡先や救急医療機関に連絡してください。
- 高血糖(350mg/dL以上)が続く
- 嘔吐や下痢が止まらず、水分補給ができない
- 強い腹痛や吐き気がある
- 意識がもうろうとする、ぐったりしている
- 呼吸が苦しい、息が果物のような甘酸っぱい匂いがする
連休前に「シックデイルール」を主治医と確認し、緊急連絡先や地域の休日診療所の情報を控えておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。
いつ測るのが正解?年末年始における血糖測定の最適なタイミング
年末年始は、食事内容や時間、活動量が普段と大きく異なります。 このような非日常の時期こそ、血糖自己測定(SMBG)がご自身の状態を把握し、治療を調整するための重要な情報源となります。 ただ漫然と測るのではなく、「何を知るために測るのか」という目的意識を持つことが大切です。
【目的別】年末年始に特に意識したい血糖測定のタイミング
| 測定の目的 | おすすめのタイミング | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 特別な食事の影響を知る | ご馳走やお餅などを食べる直前と食後2時間 | 普段の食事と比べて、どのくらい血糖値が上昇したかを確認します。 この結果が、今後の食事量や内容を調整するための貴重なデータになります。 |
| 低血糖のリスク管理 | 飲酒後の就寝前と翌朝の起床時 | アルコールは、数時間後に低血糖を引き起こす可能性があります。 特に夜間や早朝の低血糖は気づきにくく危険なため、就寝前の測定は非常に重要です。 |
| 運動の効果を実感する | 初詣や散歩など、いつもより多く歩いた前後 | 運動によって血糖値がどの程度下がるのかを「見える化」します。 効果を実感することが、運動を続けるモチベーションに繋がります。 |
| 体調変化の把握 | 「なんとなく体調が悪い」と感じた時 | 自覚症状がない高血糖や低血糖が隠れていることがあります。 体調不良の原因を探る手がかりになります。 |
測定した血糖値は、必ず時間や食事内容、運動、体調などと一緒に記録しておきましょう。 この記録は、連休中のご自身の生活を客観的に振り返るためのカルテであり、休み明けの診察時に主治医があなたの状態を正確に把握し、より良い治療方針を共に考えるための最も重要な資料となります。
休み明けも安心!年末年始の経験を自信につなげるために
年末年始という特別な期間を、ご自身の体調と向き合いながら乗り越えられたこと、まずは大変お疲れ様でした。 もし、思ったように血糖値がコントロールできず、少し落ち込んでいる方がいらっしゃっても、過度に自分を責める必要は全くありません。
大切なのは、この非日常的な期間の経験を、今後の治療に活かすための貴重な「データ」として捉え直すことです。 年末年始を乗り越えた経験は、今後の旅行や外食など、様々な場面で必ず役立つ「あなただけの教科書」になります。 この経験を自信に変え、さらに前向きに治療を続けていきましょう。
血糖値の記録を「未来の自分へのアドバイス」に変える方法
血糖値の記録は、ただ測って書き留めるだけではもったいない情報です。 この記録を分析することで、ご自身の体の特徴を深く理解し、次なる一手を考えるための重要なヒントが見えてきます。
【振り返りの3ステップ】
- ステップ1:記録を見える化する 食事の内容、時間、運動の有無、その時の血糖値の記録を時系列で並べてみましょう。 「この食事の後に血糖値が大きく上がった」「散歩をした後は数値が安定した」など、相関関係が見えてきます。
- ステップ2:成功体験と課題を分析する うまくコントロールできた時の食事や行動パターンを「成功体験」として認識しましょう。 一方で、血糖値が大きく変動した時の原因(特定の料理、食べる順番、運動不足など)を客観的に分析します。
- ステップ3:具体的なアクションプランを立てる 分析結果から、「次の外食では、まず野菜料理から頼もう」「お餅を食べる前には、具沢山の汁物を一杯飲もう」といった、ご自身が実践可能な具体的な計画を立てます。
この振り返りのプロセスは、医師があなたの治療方針を考える際にも非常に重要な情報となります。 ぜひ記録を持参し、次回の診察で一緒に振り返りを行いましょう。
家族の協力を得るチャンス!糖尿病への理解を深めてもらう会話のコツ
年末年始は、普段なかなか会えないご家族や親戚と過ごす貴重な時間です。 この機会は、ご自身の糖尿病について理解を深めてもらい、今後のサポート体制を築く絶好のチャンスと言えます。 治療は一人で抱え込むものではなく、身近な人の理解と協力があることで、心の負担が軽くなり、血糖コントロールも安定しやすくなることが医学的にもわかっています。
「よかれと思って」のすれ違いを防ぐコミュニケーション術
ご家族はあなたの体を心配するあまり、時に「食事警察」のようになってしまうことがあります。 それは愛情の裏返しですが、本人にとってはストレスになりかねません。 お互いが気持ちよく過ごすために、感謝を伝えつつ、してほしいことを具体的に伝える工夫が大切です。
| こんな時…(避けたい伝え方) | こう伝えてみよう(おすすめの伝え方) |
|---|---|
| 食事を細かくチェックされる 「あれもダメ、これもダメと言われるとつらい」 |
感謝+気持ち+提案 「いつも気にかけてくれてありがとう。ただ、自分で選んでコントロールすることが治療になるんだ。だから、温かく見守ってくれると嬉しいな」 |
| ご馳走を強く勧められる 「食べられないからいらない」 |
感謝+肯定+代替案 「ありがとう、すごく美味しそう!今は血糖値の管理を頑張っていて。代わりに、こちらの野菜の煮物をいただいてもいいかな?」 |
ご家族にお願いしたいサポート具体例
| サポートの種類 | 具体的な行動の例 |
|---|---|
| 食事のサポート | ・一緒に低糖質なレシピを考え、作ってみる ・野菜やきのこ、海藻を使った料理を食卓に一品増やす ・食事の際は「まず野菜から」を家族みんなの習慣にする |
| 生活のサポート | ・食後に「少し一緒に歩かない?」と散歩に誘う ・低血糖の症状(冷や汗、動悸、ふらつき)と、その時の対応(ブドウ糖を摂るなど)を知っておいてもらう |
| 心のサポート | ・本人の食事の選択を尊重し、細かく指摘しない ・血糖値の数値だけで一喜一憂せず、日々の努力を認める言葉をかける |
ご家族のサポートは、何よりも心強い治療薬となります。 上手にコミュニケーションをとり、チーム一丸となって糖尿病治療に取り組んでいきましょう。
年末年始に活用したいオンライン栄養相談と食事宅配サービス一覧
かかりつけの医療機関が長期休暇に入る年末年始は、食事や体調管理に不安を感じることもあるでしょう。 そんな時に心強い味方となるのが、オンラインで専門家につながるサービスや、栄養管理された食事の宅配サービスです。 これらを「お守り」として活用することで、安心して連休を過ごすことができます。
オンライン栄養相談 スマートフォンやPCを使い、自宅から管理栄養士などの専門家に直接相談できるサービスです。 年末年始に食べる予定のメニューについて具体的な食べ方のアドバイスをもらったり、連休中の食事記録を元に休み明けの食生活の立て直し方を相談したりするのに役立ちます。
糖尿病の方向け食事宅配サービス 糖質やカロリー、塩分などが厳密に計算された食事が自宅に届きます。 献立を考えたり調理したりする負担が減るため、ご馳走が続いて疲れた胃腸を休めたい時や、体調が優れない時のために冷凍庫にストックしておくと非常に便利です。 ただし、これらの食事はあくまで食事療法の一環です。利用を検討する際は、ご自身の状態に合っているか、一度かかりつけ医に相談することをおすすめします。
緊急時に慌てない!連休中に受診できる医療機関の探し方と準備
万が一、年末年始に体調を崩してしまった場合に備え、事前の準備をしておくことが何よりも大切です。 「シックデイ(病気の日)」の対応ルールを再確認し、どこに連絡すればよいかを把握しておきましょう。
連休中に受診できる医療機関の探し方
- 自治体のウェブサイトや広報誌を確認する 「〇〇市 休日夜間急患センター」や「〇〇区 休日当番医」などで検索すると、地域の情報が見つかります。
- 地域の医師会のウェブサイトを見る 地区の当番医リストを公開している場合があります。
- 救急安心センター事業(#7119)に電話する 医師や看護師が相談に応じ、緊急性の判断や受診可能な医療機関を案内してくれます。(一部地域では未実施)
- かかりつけ医の情報を確認しておく 事前に年末年始の休診期間と、緊急時の連絡先(留守番電話での案内など)を確認しておきましょう。
いざという時の「緊急受診セット」チェックリスト
以下のものを一つにまとめておくと、慌てずに行動できます。
- 健康保険証、各種医療証、診察券
- お薬手帳(または服用中の薬そのもの)
- 血糖自己測定器と関連物品(穿刺具、センサーなど)
- 血糖値や食事内容、体調の記録 (※初対面の医師に状況を正確に伝える最も重要な資料です)
- 低血糖に備える補食(ブドウ糖や糖分を含むジュース)
- 緊急連絡先(家族、かかりつけ医など)を記したメモ
- 主治医と確認した「シックデイルール」をまとめた紙
高熱や嘔吐・下痢が続く、水分が摂れない、意識がもうろうとするといった症状がある場合は、ためらわずに医療機関に連絡してください。 事前の備えが、あなた自身を守ることに繋がります。
まとめ
今回は、糖尿病の方が年末年始を安心して楽しむための過ごし方について、具体的な工夫や心構えをご紹介しました。
ご馳走を前に「我慢」ばかりでは、かえってストレスが溜まってしまいます。大切なのは「制限」ではなく、食べるものや順番、量を賢く「選択」することです。もし、思うようにいかない日があっても、決して自分を責めないでください。
この年末年始を乗り越えた経験は、ご自身の体の特徴を知るための貴重なデータになります。それは今後の外食や旅行の場面でも必ず役立つ、あなただけの教科書です。この経験を自信に変え、主治医とも共有しながら、これからも前向きにご自身のペースで治療を続けていきましょう。