
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、非常に浅くなったりする状態が繰り返される病気です。特に「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」が最も一般的で、これは気道が狭くなったり塞がれたりして呼吸が妨げられることが原因となります。睡眠時無呼吸症候群は、単なるいびきとは異なり、呼吸が繰り返し停止するため、睡眠の質が著しく低下し、日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状には以下があります。
睡眠時無呼吸症候群の多くの患者は大きないびきをかきます。いびきは気道が狭くなっているサインであり、睡眠時無呼吸症候群の重要な兆候です。
睡眠中に呼吸が数秒から数十秒止まることが繰り返されます。周囲の人がこれを目撃することも多いです。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠の質が低下するため、十分寝ているのに日中に強い眠気や集中力の低下が起こります。
夜間の酸素不足や呼吸障害により、朝起きたときに頭痛やのどの渇きを感じることがあります。
睡眠時無呼吸症候群による睡眠の断片化により、夜間に何度も目が覚めたり、トイレに起きることが増えます。
睡眠時無呼吸症候群の原因は様々ですが、主に以下の要因が挙げられます。
肥満による首周りの脂肪の蓄積が気道を狭め、呼吸が妨げられます。加齢に伴い筋肉が緩むことも影響します。
扁桃腺が大きいと気道を圧迫しやすくなります。
下顎が小さい、後退している場合や慢性的な鼻づまりも気道の狭窄を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群は中高年の男性に多く、男性ホルモンも影響すると考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の診断には専門的な検査が必要です。主な検査方法は以下の通りです。
睡眠時無呼吸症候群の診断で最も正確な検査方法です。睡眠中に以下の項目を同時に測定します。
この検査は病院の睡眠検査室で一晩かけて行い、睡眠時無呼吸症候群の重症度や睡眠の質を詳細に把握できます。
自宅で機械を装着し、呼吸の状態や血中酸素飽和度を測定する方法です。睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングや簡易的な診断に用いられます。PSGほど詳細なデータは得られませんが、手軽に検査できるのがメリットです。
睡眠時無呼吸症候群は単なる睡眠障害に留まらず、多くの重篤な合併症を引き起こします。
呼吸停止による酸素不足で交感神経が過剰に働き、持続的な高血圧になりやすいです。
睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞、狭心症、心不全、不整脈(特に心房細動)などのリスクを高めます。これらは心臓に大きな負担をかけ、命に関わることもあります。
高血圧や血管障害が進むことで、脳梗塞や脳出血のリスクが増加します。
睡眠障害によりインスリンの効果が低下し、糖尿病の発症や悪化に繋がります。
肥満や脂質異常症などメタボリックシンドロームの一因としても重要です。
強い眠気が交通事故や労働災害のリスクを高めます。
睡眠の質の低下により、気分障害や集中力低下、記憶力の減退が起こることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、症状の重さや原因に応じて多様な方法があります。
肥満が睡眠時無呼吸症候群の大きな原因であるため、体重を減らすことが症状改善に直結します。
喫煙や飲酒は気道を狭くするため、控えることが望ましいです。
仰向けで寝ると気道が塞がりやすいため、横向きで寝るようにすると効果があります。
CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群の中で最も効果的な治療法です。就寝中にマスクを鼻や口に装着し、空気を送り込むことで気道を広げ、呼吸停止を防ぎます。多くの患者で日中の眠気改善や合併症リスク低減に繋がります。慣れるまで違和感がある場合もありますが、継続が重要です。
軽度〜中等度の睡眠時無呼吸症候群患者に適し、下顎を前に出すマウスピースを装着して気道を広げます。手軽で負担が少ない治療法です。
重症例や他の治療が効果不十分な場合に検討されます。扁桃腺やアデノイドの切除、顎の骨格矯正、鼻づまり改善のための手術などが行われます。
睡眠時無呼吸症候群は、本人だけでなく周囲の人にも大きな影響を及ぼす疾患です。いびきがひどい、日中の眠気が強いなどの症状があれば早めに専門医を受診し、適切な検査と治療を受けることが重要です。適切に管理すれば、睡眠時無呼吸症候群は十分に改善できる病気であり、生活の質を大きく向上させることが可能です。