
脂質異常症
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の脂質(主にコレステロールや中性脂肪)の量が正常範囲を超えて多すぎたり少なすぎたりする状態を指します。以前は「高脂血症」とも呼ばれていましたが、現在では「脂質異常症」という言葉が一般的に使われています。
血液中の脂質には、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)などがあり、これらのバランスが崩れると動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中といった重大な病気に発展する可能性があります。
脂質異常症の診断には、主に血液検査が用いられます。特に12時間以上の絶食後に採血を行い、正確な脂質の数値を測定します。以下は代表的な検査項目と基準です:
項目 | 基準値(目安) | 異常値と判断される基準 |
---|---|---|
LDLコレステロール(悪玉) | <120 mg/dL | ≧140 mg/dL |
HDLコレステロール(善玉) | ≧40 mg/dL | <40 mg/dL |
中性脂肪(TG) | <150 mg/dL | ≧150 mg/dL |
総コレステロール | 120~219 mg/dL | ≧220 mg/dL(注意) |
数値の評価は年齢、性別、既往歴によって変わるため、医師の判断が重要です。
脂質異常症を放置すると、動脈硬化が進行し、さまざまな重大な病気を引き起こす可能性があります。
心血管系
脳血管系
末梢血管系
その他のリスク
これらの合併症は症状が現れにくく、気づいたときにはかなり進行しているケースもあるため、脂質異常症の早期発見と治療が重要です。
脂質異常症の治療は、動脈硬化を防ぎ、合併症を予防することが目的です。治療は以下の2つが基本です:
やること | 具体例 |
---|---|
飽和脂肪酸を減らす | バター・脂身の多い肉・乳製品を控える |
トランス脂肪酸を避ける | マーガリンや加工食品を減らす |
魚・野菜・食物繊維を増やす | 青魚(EPA/DHA)、大豆、海藻類など |
カロリー制限 | 適正体重(BMI 22前後)を意識する |
また、1日3食規則正しく食べ、間食やドカ食いを避けることも重要です。調理法は「蒸す・煮る・焼く」が推奨され、「揚げる」は控えめに。油は良質なもの(オリーブ油など)を少量使うのが理想です。
週3~5回、30分程度の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を行いましょう。筋トレを組み合わせるとさらに効果的です。運動により、HDL(善玉)が増え、TG(中性脂肪)が減少することが期待できます。
喫煙はHDLを下げ、動脈硬化を進行させます。アルコールは少量であればHDLを増やす効果がありますが、過剰摂取は中性脂肪を増やすため、注意が必要です。
薬物療法は短期間ではなく、長期にわたる管理が必要です。効果や副作用の確認のため、定期的な血液検査が行われます。また、脂質異常症以外の疾患(糖尿病や高血圧など)との総合的な治療が求められます。
項目 | 一般的な目標値 |
---|---|
LDLコレステロール | <140 mg/dL(高リスク者は<100または70) |
HDLコレステロール | ≧40 mg/dL |
中性脂肪(TG) | <150 mg/dL |
これらは日本動脈硬化学会のガイドラインをもとにしています。個人のリスクや年齢、病歴によって目標値は変わりますので、医師の判断が大切です。
脂質異常症は、一見症状がなくても進行しやすく、放置すると命にかかわる病気の引き金となります。だからこそ、脂質異常症の早期発見・予防・治療は非常に重要です。
まずは生活習慣を見直すこと。定期的な健康診断を受け、自分の数値を知ること。そして、必要に応じて医師と相談しながら、薬物療法も含めた総合的な管理を行いましょう。
現代では、食生活の欧米化や運動不足により、若年層でも脂質異常症が増加しています。ご自身やご家族の健康を守るためにも、正しい知識と予防意識を持つことが大切です。ご心配な点がある方は、当院へご相談ください。