歯周病を治すと血糖値が下がるって本当?糖尿病内科専門医が「歯科検診」を強く勧める理由を解説します|調布市の仙川駅で糖尿病治療なら|せたがや仙川クリニック|糖尿病内科・甲状腺内科・内科・アレルギー科

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医療コラム

歯周病を治すと血糖値が下がるって本当?糖尿病内科専門医が「歯科検診」を強く勧める理由を解説します|調布市の仙川駅で糖尿病治療なら|せたがや仙川クリニック|糖尿病内科・甲状腺内科・内科・アレルギー科

歯周病を治すと血糖値が下がるって本当?糖尿病内科専門医が「歯科検診」を強く勧める理由を解説します

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「歯磨きのたびに出血する」「なんだか歯がグラつく気がする」。そんなお口の不調を、単なる口内トラブルだと思っていませんか?実はその症状、あなたの血糖コントロールを乱している危険なサインかもしれません。

実際に、糖尿病の方は歯周病になるリスクが約3倍も高く、歯周病は「糖尿病の6番目の合併症」と公式に位置づけられています。両者は互いに悪影響を及ぼし合い、症状を悪化させる深刻な関係にあるのです。

しかし、逆に言えば、歯科治療によって歯周病を改善するだけで、血糖値の指標であるHbA1cが糖尿病治療薬1剤分に匹敵するほど改善するデータもあります。この記事では、専門医がその驚きの関係性と治療法について詳しく解説します。

糖尿病と歯周病が深く関係する2つの医学的理由

「最近、歯磨きのたびに歯茎から血が出る」
「なんだか歯が少しグラグラする気がする」

このようなお口のトラブルを感じていらっしゃるなら、それは単なる口内の問題ではないかもしれません。実は、糖尿病と歯周病は互いに悪影響を及ぼしあう、非常に密接な関係にあることが医学的に明らかになっています。

実際に、糖尿病の方はそうでない方に比べて歯周病にかかる確率が約3倍も高いというデータもあります。この関係性の深さから、米国糖尿病学会(ADA)は歯周病を「糖尿病の6番目の合併症」と公式に位置づけているほどです。

なぜ、これほどまでに関係が深いのでしょうか。ここからは、糖尿病専門医の視点から、その2つの大きな理由を一緒に詳しく見ていきましょう。

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糖尿病になると歯周病が悪化しやすくなるメカニズム

糖尿病をお持ちの方が歯周病にかかりやすく、また一度かかると悪化しやすいのには、高血糖が引き起こす体内の変化が大きく関わっています。血糖値が高い状態が続くと、お口の中の環境は歯周病菌にとって非常に好都合な状態になってしまうのです。

主なメカニズムは以下の4つです。

  1. 免疫力の低下
     血糖値が高いと、体の中をパトロールして細菌と戦ってくれる「白血球」という細胞の働きが鈍くなります。そのため、お口の中に侵入してきた歯周病菌に対する抵抗力が弱まり、感染しやすくなってしまいます。

  2. 血管へのダメージと修復能力の低下
     高血糖は全身の細い血管を傷つけ、血流を悪化させます。歯茎は毛細血管が網の目のように集まっている場所なので、このダメージを非常に受けやすいのです。血流が悪くなると、炎症が起きても組織の修復に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、歯茎の傷の治りが遅くなってしまいます。

  3. AGEs(終末糖化産物)の蓄積
     体内の余分な糖がタンパク質と結びついてできる「AGEs」という悪玉物質があります。これは、ホットケーキがこんがり焼けるように、体が「焦げ付く」ようなイメージです。このAGEsが歯茎のコラーゲン線維に蓄積すると、組織が弾力を失ってもろくなり、歯周病が進行しやすくなります。

  4. 唾液の減少(ドライマウス)
     高血糖は脱水を引き起こし、口が渇きやすくなります。唾液には、お口の中の汚れを洗い流し、細菌の増殖を抑える大切な働きがあります。そのため、唾液が減ると歯周病菌が繁殖しやすい環境になってしまうのです。

これらに加え、近年の研究では腸内細菌叢(腸内フローラ)が全身の免疫に影響を与えることが知られています。同様に、お口の中にも数百種類もの細菌(口腔内マイクロバイオーム)がバランスを保って存在しています。高血糖は、このお口の中の細菌バランスをも崩し、歯周病菌が優位な状況を作り出してしまうのです。

逆に歯周病が血糖コントロールを乱すのはなぜか

歯周病は、単にお口の中だけの問題では終わりません。歯周病によって起きている歯茎の「慢性的な炎症」が、実は血糖コントロールを直接的に悪化させる原因になるのです。

歯周病にかかっている方の歯茎では、炎症を起こす「TNF-α(ティーエヌエフアルファ)」などの炎症性物質が常に作り出されています。この物質が歯茎の血管から血液の流れに乗って全身へと運ばれると、非常に困った事態を引き起こします。

それは、血糖値を下げる唯一のホルモンである「インスリン」の働きを邪魔してしまうことです。これを専門的には「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリン抵抗性が高まると、すい臓からインスリンがしっかり分泌されていても、筋肉や脂肪の細胞が血液中のブドウ糖をうまく取り込めなくなり、結果として血糖値が下がりにくくなってしまうのです。

インスリンは非常にデリケートなホルモンで、その働きを最大限に引き出すことが糖尿病治療の鍵となります。お口の中の炎症が、その大切な働きを妨げてしまうのは、非常にもったいないことです。

さらに、歯周病が進行して歯がぐらついたり、噛むと痛んだりすると、食事内容にも変化が現れます。無意識のうちに、あまり噛まなくてもよい柔らかい食事を選びがちになるのです。

  • うどんやラーメンなどの麺類
  • パン
  • おかゆ

これらは糖質に偏りやすく、食後の血糖値を急激に上昇させるため、さらなる悪循環に陥る可能性があります。糖尿病治療は、血糖値だけでなく全身の炎症をコントロールすることが重要です。歯周病の放置は、その治療効果を妨げる大きな要因になり得るのです。

歯茎からの出血や歯のぐらつきは高血糖のサイン?

「歯茎からの出血」や「歯のぐらつき」は、歯周病の典型的な症状ですが、これらは高血糖状態を示唆する「体からのSOSサイン」である可能性も考えられます。

もちろん、これらの症状があるからといって、必ずしも糖尿病であるとは断定できません。しかし、糖尿病があると歯周病の進行スピードが速まるため、これまで問題がなかったのに急に症状が出てきた場合は、血糖値が高くなっている可能性を疑う必要があります。

高血糖によって免疫力が低下し、歯茎の血管がもろくなっていると、歯ブラシなどのほんの少しの刺激でも出血しやすくなります。また、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けるスピードも速まるため、歯のぐらつきも現れやすくなるのです。

ぜひ、ご自身のお口の状態をチェックしてみてください。

こんなサイン、ありませんか?
☐ 歯磨きやフロスの時に血が出ることがある
☐ 歯茎が赤く腫れている、または紫色っぽくなっている
☐ 歯茎が下がり、歯が以前より長くなったように見える
☐ 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなった
☐ 歯が浮いたような、ムズムズする感じがする
☐ 硬いものが以前より噛みにくくなったと感じる

これらのサインは、見過ごしてはいけない体からの重要なメッセージです。一つでも当てはまる場合は、放置せずに歯科医院を受診するとともに、糖尿病を専門とする内科医にもご相談ください。

糖尿病患者さんが特に注意すべき口臭・腫れ・膿の症状

出血や歯のぐらつき以外にも、糖尿病患者さんに特に気をつけていただきたいお口の危険なサインがあります。それは「口臭」「歯茎の腫れ」「歯茎から出る膿」です。これらは歯周病がかなり進行している可能性を示しています。

口臭
 歯周病菌は、タンパク質を分解する際に「揮発性硫黄化合物」という、卵が腐ったような強い臭いのガスを発生させます。これが口臭の主な原因です。ご家族から指摘されたり、ご自身で口臭が気になったりする場合は、歯周病菌が増殖しているサインかもしれません。

歯茎の腫れ・膿
 歯茎がぶよぶよと赤黒く腫れあがったり、指で歯茎を押すと白い膿が出てきたりするのは、非常に危険な状態です。これは、歯と歯茎の溝(歯周ポケット)の奥深くで細菌が大量に繁殖し、歯を支えている大切な骨を溶かしている証拠にほかなりません。

お口の粘膜は、体内に細菌が侵入するのを防ぐ重要なバリアです。歯周病でこのバリアが破壊されると、細菌やその毒素が血管を通って簡単に全身に回りやすくなります。これは、体の防御システムが脅かされている状態であり、血糖コントロールはもちろん、全身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

これらの症状に気づいたら、決して自己判断で様子を見たりせず、迷わずすぐに歯科医院を受診してください。早期の対応が、あなたのお口と全身の健康を守ることに繋がります。

歯周病治療で血糖値はどれくらい改善するのか

「歯周病を治療すると、血糖値も良くなる」と聞いて、本当だろうかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は、お口の中の健康と糖尿病は、医学的にみて非常に深い関係にあります。

歯周病によって引き起こされる体内の慢性的な炎症が、血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔してしまうのです。逆に言えば、歯科治療で歯周病を改善することは、この邪魔者を追い払うことにつながります。

食事療法や運動療法といった日々の努力に加えて、お口のケアという新しいアプローチで、一緒に血糖コントロールの改善を目指していきましょう。

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歯科治療によるHbA1c改善の具体的な数値と事例

歯周病の治療を行うことで、血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)がどれくらい改善するのか、具体的な数値が気になりますよね。

これまでの多くの研究報告をまとめると、歯周病の基本治療をしっかりと行うことで、HbA1cの値が平均して0.4%〜0.7%程度低下することがわかっています。

これは、糖尿病の飲み薬を1種類追加したのと同じくらいの改善効果に匹敵する、非常に大きな数値です。

治療内容 期待されるHbA1c改善効果
歯周病の基本治療(歯石除去など) 0.4%〜0.7%程度の低下
糖尿病治療薬の追加(1剤) 約0.5%〜1.0%程度の低下

なぜこのような改善が見られるのでしょうか。歯周病があると、歯茎で常に小さな火事が起きているような炎症状態になり、「TNF-α」などの炎症を引き起こす物質が血液中に流れ込みます。

この物質が、血糖値を下げるインスリンの働きを弱めてしまう(インスリン抵抗性)のです。歯周病治療によって歯茎の炎症が治まると、この邪魔な物質が減少し、インスリンが本来の力を発揮できるようになるため、血糖値が下がりやすくなります。

最近では、オルホグリプロンのような経口のGLP-1受容体作動薬も登場し、血糖コントロールの選択肢は増えています。これらの新しい薬と並行して、歯周病治療というアプローチも非常に重要になるのです。

糖尿病患者さんが受ける歯周病治療の種類と流れ

糖尿病患者さんの歯周病治療も、基本的には一般の方と同じ流れで進みます。ただし、血糖コントロールの状態を考慮しながら、より慎重に治療計画を立てていくことが大切です。

治療は主に以下のステップで進められます。

  1. 検査・カウンセリング
     歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)の深さを測ったり、レントゲン撮影で歯を支える骨の状態を確認したりします。現在の血糖コントロールの状態(HbA1cなど)も共有することが重要です。お薬手帳や血液検査の結果を持参いただくと、より安全な治療につながります。

  2. 初期治療(歯周基本治療)
     治療の土台となるのが、ご自身でのプラークコントロールです。歯科衛生士から正しい歯磨きの方法を学びます。その上で、歯ブラシでは取れない歯石を専門の器具で除去します(スケーリング・ルートプレーニング)。

  3. 再評価
     初期治療から数週間後、歯茎の状態がどれくらい改善したかを確認します。ここでの改善度が、その後の治療方針を決める上で重要な指標となります。

  4. 外科治療(必要な場合)
     初期治療だけでは改善が難しい深い歯周ポケットがある場合、歯茎を切開して歯石を直接取り除く手術(フラップ手術など)を行うことがあります。

  5. メンテナンス(定期検診)
     治療が終わった後も、良い状態を維持し再発を防ぐため、3〜6ヶ月に一度の定期的なクリーニングが不可欠です。治療のゴールは「治す」ことではなく、「良い状態を維持し続ける」ことなのです。

糖尿病治療では、注射が苦手な方のために経口インスリンのような新しい投与方法の研究が進んでいます。同様に、歯周病治療も患者さんの状態に合わせて様々な方法が選択されますので、歯科医師とよく相談しながら進めていきましょう。

治療は痛い?期間はどのくらい?患者さんの不安に答えます

歯科治療と聞くと、「痛いのではないか」「長くかかるのではないか」と不安に感じる方も少なくないでしょう。特に糖尿病をお持ちの方は、治療による身体への負担も心配だと思います。

【痛みについて】
歯石を取る際や外科的な処置を行う際には、必要に応じて麻酔を使用します。 歯茎の表面に塗るタイプの麻酔や、注射による局所麻酔を用いるため、治療中に強い痛みを感じることはほとんどありません。

治療後に多少の痛みや違和感が出ることがありますが、その場合は処方される鎮痛剤で十分に対応できます。痛みを我慢するとストレスで血糖値が変動することもありますので、心配なことは事前に遠慮なく伝えましょう。

【期間について】
治療期間は、歯周病の進行度によって大きく異なります。

治療段階 期間の目安
初期治療(軽度〜中等度) 1ヶ月〜3ヶ月程度(通院回数:数回)
外科治療(重度の場合) さらに3ヶ月〜6ヶ月程度
メンテナンス(治療後) 3ヶ月〜6ヶ月に1回の定期通院

お口の中全体を数回に分けて少しずつ治療していくため、ある程度の期間は必要になります。しかし、焦らず一歩ずつ着実に進めていくことが、数ヶ月後の良好な血糖コントロールと健康な歯茎につながります。

保険適用はどこまで?知っておきたい治療費と医療費控除

治療を始めるにあたり、費用のことも大切なポイントです。歯周病治療は、どこまでが保険適用で、どのような場合に自費診療となるのかを知っておくと、安心して治療に臨めます。

【保険が適用される治療】
基本的な歯周病治療のほとんどは、健康保険の適用範囲内です。

  • 初診・再診料
  • 歯周病の検査(歯周ポケット測定、レントゲン撮影など)
  • 歯磨き指導
  • 歯石除去(スケーリング・ルートプレーニング)
  • 歯周病の外科手術
  • 抜歯
  • 治療後のメンテナンス

【保険適用外(自費診療)となる主な治療】

  • インプラント治療
  • 失われた骨を再生させるための特殊な材料を用いた再生療法
  • 見た目の美しさを重視した被せ物(セラミックなど)

【知っておきたい「医療費控除」】
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合、確定申告で**「医療費控除」**という制度を利用できます。これにより、所得税や住民税の一部が戻ってくる可能性があります。

歯科治療費はもちろん、当院での糖尿病治療費や薬局で支払ったお薬代も合算できます。通院のための公共交通機関の交通費も一部対象になりますので、領収書は必ず保管しておきましょう。

糖尿病治療では、アミリン製剤とRAS阻害薬のように、薬の組み合わせでより良い効果を目指す研究が進んでいます。同様に、治療そのものと医療費控除のような制度をうまく組み合わせることも、安心して治療を継続するための賢い方法と言えるでしょう。

糖尿病患者さんのための歯科医院選びとセルフケア

これまでの内容で、糖尿病と歯周病が互いの症状を悪化させる、非常に深い関係にあることをご理解いただけたかと思います。

だからこそ、糖尿病の治療と同じように、お口の健康を守るための日々のケアや、信頼できる歯科医院での定期的なチェックが非常に大切になります。ここからは、糖尿病を持つ方が安心して歯科治療を受けるための「実践編」として、医院選びのポイントやご自宅でできるセルフケアの方法を一緒に見ていきましょう。

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インプラント治療が受けられるHbA1cの基準値とは

歯を失ってしまった場合の選択肢として、インプラント治療を検討される方も多いでしょう。しかし、インプラントは外科手術を伴うため、糖尿病をお持ちの方は誰でも受けられるわけではなく、血糖コントロールの状態が非常に重要になります。

一般的に、インプラント治療を安全に受けるための目安として、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値が7.0%未満であることが一つの基準とされています。なぜなら、血糖値が高い状態では、以下のようなリスクが高まってしまうからです。

  • 感染への抵抗力が弱まる
     高血糖は、細菌と戦う白血球の働きを鈍らせます。そのため、手術した部分が細菌に感染しやすくなります。

  • 傷の治りが遅くなる
     高血糖は全身の血管、特に細い血管にダメージを与え、血流を悪化させます。これにより、手術後の傷の治りに必要な酸素や栄養が届きにくくなり、インプラントと骨がうまく結合しないリスクが高まります。

  • 骨の質が低下する
     高血糖によって作られるAGEs(終末糖化産物)は、歯茎だけでなく骨のコラーゲンにも蓄積し、骨の質をもろくしてしまいます。

HbA1cの値に応じた治療方針の目安は以下の通りです。

HbA1cの数値 治療の可否・方針
7.0%未満 治療可能な場合が多いです。ただし、必ずかかりつけ内科医と歯科医が連携し、全身状態を管理しながら慎重に治療を進めます。
7.0%〜8.0% すぐに治療は開始せず、まずは血糖コントロールの改善を優先します。食事や運動、お薬の調整を行い、数値が安定してから再検討します。
8.0%以上 原則として治療は延期となります。感染症や治癒不全のリスクが非常に高いため、まずは内科での治療に専念することが最も重要です。

もし血糖値が理由で「今は治療が難しい」と言われたとしても、決して諦める必要はありません。かかりつけ医と相談しながら血糖コントロールを改善し、安全に治療が受けられる状態を目指しましょう。

糖尿病内科医が教える「信頼できる歯科医」の選び方3つのポイント

糖尿病をお持ちの方にとって、歯科医院選びは治療の成否を分けるほど重要です。私たち糖尿病内科医の視点から、安心して治療を任せられる歯科医を選ぶための3つのポイントをご紹介します。

  1. 糖尿病への理解と治療経験が豊富か
     糖尿病患者さんのお口の中は、唾液が減って乾燥しやすい、感染しやすいなど、特有の状態にあります。こうした特徴を深く理解している歯科医を選ぶことが大切です。初診時に、HbA1cの値や服用中の薬、低血糖の経験、合併症の有無などを詳しく尋ねてくれる歯科医は、リスク管理意識が高いと言えるでしょう。

  2. かかりつけの内科医と積極的に連携してくれるか
     安全な歯科治療のためには、私たち内科医との連携が不可欠です。歯科治療が血糖値に与える影響や、患者さんの全身状態を共有しながら治療を進める必要があります。治療前に「かかりつけ医からの情報提供書(紹介状)はありますか?」と確認してくれる歯科医を選びましょう。このような医科歯科連携は、お口だけでなく、心臓や腎臓といった全身の合併症予防にも繋がる大切な取り組みです。

  3. 治療後の予防とメンテナンスに力を入れているか
     歯周病は、一度良くなっても再発しやすい病気です。これは、糖尿病が日々の生活習慣管理を必要とするのと似ています。そのため、治療して終わりではなく、良い状態を維持するための定期的なメンテナンスが欠かせません。治療計画を立てる際に、数ヶ月に一度のクリーニングといった長期的な予防プログラムを提案してくれる歯科医院を選びましょう。

血糖値を安定させる毎日の正しい歯磨きと歯ブラシ選び

歯科医院での専門的なケアと合わせて、血糖コントロールを安定させるために最も重要なのが、ご自宅での毎日のセルフケアです。

近年の研究では、腸内に多くの細菌がバランスを保って暮らしている「腸内細菌叢」が、全身の免疫や健康に影響を与えることがわかっています。実はお口の中にも同じように数百種類もの細菌(口腔内マイクロバイオーム)が暮らしており、このバランスが崩れると歯周病が悪化します。日々の歯磨きは、この細菌バランスを整え、歯周病菌の活動を抑えるうえで非常に効果的なのです。

【正しい歯磨きとケアアイテム】

  • 歯ブラシの当て方
     歯と歯茎の境目に45度の角度でブラシを当て、力を入れずに小刻みに優しく動かします。ゴシゴシと強く磨くと、かえって歯茎を傷つけてしまうので注意しましょう。

  • 歯間ブラシ・デンタルフロスの活用
     歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れの約4割は落としきれていないと言われます。歯周病は歯の間から進行しやすいため、歯間ブラシやデンタルフロスを毎日必ず使いましょう。

  • 歯ブラシの選び方
     ヘッドは小さめ、毛の硬さは「やわらかめ」または「ふつう」がおすすめです。歯茎からの出血が気になる方は「やわらかめ」を選び、優しくケアしましょう。

毎日のことだからこそ、無理なく続けられることが大切です。糖尿病治療でも、注射の負担を減らすための経口インスリン(飲み薬タイプのインスリン)の開発が進んでいます。セルフケアも同様に、電動歯ブラシなどを上手に活用して、ご自身が続けやすい方法を見つけるのが良いでしょう。

かかりつけ医への相談方法と歯科受診の最適なタイミング

「歯茎から血が出るけど、まずは内科の先生に言うべき?」「いつ歯医者さんに行けばいいの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

お口の中に気になる症状があれば、まずはお近くのかかりつけ医に、どんな些細なことでもお話しください。「最近、口が乾きやすい」「歯磨きの時に血が出ることがある」といった情報は、糖尿病の状態を把握するうえで重要なサインになることもあります。ご相談いただければ、現在の体の状態をまとめた情報提供書(診療情報提供書)を作成し、スムーズに歯科医院へお繋ぎすることができます。

では、歯科受診に最適なタイミングはいつでしょうか。

  • 特に症状がない場合
     3ヶ月~半年に1回の定期検診が理想です。症状がなくても、歯周病が静かに進行していることがあります。プロによるクリーニングで、ご自身では落としきれない汚れを除去してもらいましょう。

  • 気になる症状がある場合
     以下のサインが見られたら、すぐにでも受診を検討してください。

    • 歯磨きのたびに出血する
    • 歯茎が赤く腫れている、むずがゆい
    • 口臭が強くなった気がする
    • 歯が浮いた感じがする、ぐらつく
    • 食べ物が噛みにくくなった

血糖コントロールが不安定な時期は、歯科医の判断で応急処置のみにとどめ、本格的な治療は血糖値が安定してから再開することがあります。これは「治療を断られた」わけではなく、安全を最優先するための大切な判断ですので、ご安心ください。まずは私たちと一緒に、治療の土台となる体調管理から始めていきましょう。

まとめ

今回は、糖尿病と歯周病が互いに悪影響を及ぼし合う密接な関係と、歯周病治療が血糖コントロールを改善する理由について詳しく解説しました。

歯茎で起きている慢性的な炎症は、血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔してしまいます。そのため、歯周病をきちんと治療することは、糖尿病のお薬を1種類追加するのと同じくらいのHbA1c改善効果が期待できる、非常に有効なアプローチなのです。

日々の食事や運動療法に、ぜひ「お口のケア」という新しい視点を加えてみてください。「歯茎からの出血」といった些細なサインを見逃さず、まずはかかりつけ医や歯科医院へ相談することが、全身の健康を守るための大切な一歩となります。

参考文献

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この記事を書いた人

医療法人社団健楓会 統括責任者

小澤 剛史

医療法人社団健楓会 理事長 小澤 剛史
資格
日本糖尿病学会糖尿病内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医 他
プロフィール
東京医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院糖尿病センターや地域中核病院にて、高度かつ総合的な内科・糖尿病診療の研鑽を積んできた。 現在はせたがや仙川クリニックの統括責任者として、薬物療法だけでなく食事や生活背景まで考慮し、「長く安心して通えるかかりつけ医」として地域医療を支えている。
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